「源氏巻」で優しくなった吉良上野介

10月24日の「年の瀬を感じてしまうライトアップと忠臣蔵」、10月31日の「吉良邸は広かった」に続いて、本日は忠臣蔵・第3弾です。

歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」(かなてほんちゅうしんぐら)においても、浅野内匠頭(劇中では塩谷判官=えんやはんがん)が、吉良上野介(劇中では高師直=こうのもろのう)に対して、刃傷に及ぶ場面は前半のクライマックスです。(第3段の後半)

この刃傷の場面の前に、仮名手本忠臣蔵では、もう一人の接待饗応役である桃井若狭助が、高師直の嫌がらせにキレて、師直に切りかかりそうになるシーンがあります。

その気配を察知した桃井若狭助の家来(加古川本蔵)が、機転を利かせ、すぐに師直に賄賂を渡して、ことなきを得るという話です。

高師直が金に汚いとのイメージを浮き彫りにするための伏線作りですね。

実を言いますと、この話に類似した事件が浅野内匠頭の事件の数年前にありました。

接待饗応役の大名が吉良上野介に対して刀を抜いたのです。(場所は江戸城内ではなく、大名屋敷の中だったようですが) この時、江戸にいた家老が吉良上野介に賄賂を渡して、不問に付してもらったと言います。

仮名手本忠臣蔵の第2段、第3段(前半)は、この話が裏付けとなっています。

桃井若狭助のモデルとなった大名は、石見国(島根県西部)・津和野4万3千石の藩主である亀井玆親(かめい これちか)。

加古川本蔵のモデルとなった家老は、賄賂を菓子ということにして、小判を箱に敷き詰めたと言われていますが、この話に由来するお菓子が、津和野の銘菓としていまも残っています。

それが「源氏巻」(げんじまき)です。

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「源氏巻」のアイディアによって津和野藩は明治まで残ります。

この藩は山奥の小藩ですが、人材教育に力を注ぎ、明治時代には文豪・森鴎外や、哲学者・西周(にしあまね)を生みました。

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コメント

  1. あをによし より:

    この週末、まさに萩と併せて津和野を旅してきました(もちろん源氏巻も美味しく頂きました)。

    ところで、津和野には「旧津和野藩家老多胡家表門」という観光名所があったのですが、山陰に所縁の深い芸のない旅芸人さんと何らかの関係があるのでしょうか?

  2. 芸のない旅芸人 より:

    あをによしさん

    山陰にお金を落としていただき、ありがとうございます。

    実は津和野の多胡さんのご先祖が、加古川本蔵のモデルです。

    津和野藩主の亀井家も、家老の多胡家ももともとは戦国時代に山陰山陽のほぼ全域を制覇した尼子経久の家臣団です。

    残念ながら、同じ多胡でも我が家とは縁戚関係にございません。

    ガクッ。

  3. ARCadia より:

    エーっ

    以前、お袋を御門の前に連れて行ったとき、アレの遠戚、って紹介しちゃったよ。

  4. ARCadia より:

    おまけに、(酒蔵の試飲にばかり気をとられて)源氏巻を見逃してしまいましたよ。

    調べると、某デパートにあるようなので、今度買ってみよう。

    そういえば、数年前、相良町の店にワザワザ寄って、ワイロ最中をもとめたことがありました。

    その頃は大人気だったけど、今はどうなんだろう。

    小判型最中を始め、外装までズバリを模した、ギミック満載の「進物」なので一回は使ってみてもいいかも。

    (あくまでギミック、、、コスパはよくありません(私見))

  5. 芸のない旅芸人 より:

    ARCadiaさん

    源氏巻は美味いですよ。保存料など一切、入っていないしね。値段も一本が270円とお手頃。東京のデパートにも入っています。

    ところで、相良の賄賂モナカは懐かしいね。

    相良とくれば、田沼意次の城下町ですからね。

  6. 克己 より:

    ふむふむ・・・松の廊下事件前段の話、何かで聞いたことがあったような気がします。

    津和野藩家老多胡家表門、ぜひ行ってみたいですねぇ!

    モナカといえば、江戸土産の切腹最中もイイですよね!(^o^)

  7. 芸のない旅芸人 より:

    克己さま

    昨年は島根県東部(出雲大社など)にお越しいただきありがとうございました。

    津和野町も含め、島根県西部も魅力的なところが満載ですよ。

    ご来訪をお待ちしております。