話の達人に学ぶ

 めずらしく、月曜日から水曜日まで東京にいます。

 今週後半から、人前で話をする機会が断続的にあるため、そのための準備をしておりました。

 人前で話をする際に、一番気を遣わない場は、特定組織(会社など)の特定層を対象とする会合です。

 理由は2つあります。

 1つは話を聞いてくださる人たちの求めるものが、ほぼ均一であり、話の的(まと)が絞りやすいからです。 ウケを狙おうとすれば、聞く人にとって身近な事例を話すことが必須ですが、聞き手のマジョリティが共有できる事例を探すことはさほど難しくありません。

 もう1つは「場」が完全にクローズとなるため、オフレコ話を挟み込むことができることです。具体性を持ったオフレコ話が多いほど、事後のアンケート結果は良好のように感じます。

 それに対して、もっともやりにくいのが、不特定多数を相手に話をする場合です。

 最近は守秘義務とやらで、聞き手の名簿を見せてくれないようなケースもあります。 このような場合は、ただちに話をすること自体をお断りします。 そりゃ、当然でしょう。 話をする側が丸腰でやっているのに、聞き手が鎧兜というのは納得がいきません。

 両者の中間に位置するのが、ある特定組織の会であっても、聞き手の役職や年齢層などにバラツキがあるケースです。

 この場合、「クローズ」であり、オフレコ話は使えるものの、聞き手の問題意識や興味が異なるため、すべての聞き手が共有できるネタで話を引っ張っていくことはできません。

 特定の層からはお褒めの言葉をいただく半面、別な層の人たちからは「つまらなかった」、「難しかった」、「簡単すぎた」といった辛い点数をもらいます。

 解決策を教えてくれたのが、仕事仲間のYさん。

 Yさんは、某劇場で著名な落語家の話を聞いていた時に、それを発見したとのこと。

 観客の年齢層や職業などは千差万別。 その落語家さんは、聞き手が頭を使う高度なネタと、ダジャレまがいのネタとを、交互に繰り出していたのです。 「十のネタ」のうち「五のネタ」が面白ければ、聞き手は満足するということですね。

 からくりはシンプルですが、確かにその通りです。 納得。

 Yさんの話を聞いて以来、「交互に繰り出すパターン」を使わせてもらっています。 落語名人の足元にも及びませんが、聞き手の満足度は少しは上がったように感じます。


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コメント

  1. Y より:

    解決策を教えたことになっているYです。

    ブログいつも楽しく拝見しております。

    講演がもはや芸能の域に達された旅芸人様の足下にも及ばず、講演業に適性がないことを痛感している当の本人です。

    これからも芸にますます磨きをかけてください!

  2. 芸のない旅芸人 より:

    Yさん

    いつもありがとうございます。

    落語家さんの手法は、本当に役に立っていますよ。

    あとは間の取り方ですよね。これも落語家さんから学びました。