自己資本比率よりも、リスク資本の配賦と使用量 (下)

昨日の続きです。

仕事がら、地域金融機関の株式投資家や証券アナリスト向けの決算説明資料には目を通しています。

株式市場の投資家向けの説明資料ですから、資本がいかなる形で有効活用されて、それが収益につながっているか、というところは重要なチェックポイントになります。

そうなると金融機関がマネジメントすべきリスクごと(信用リスク、金利リスク、株式投資のリスクなど) の資本の配賦状況、実際の資本の使用状況 (リスク別)、それぞれのリスクに見合ったリターンは、絶対に外せない数値であるべきです。

ところがこれらの情報は十分に発信されておらず、そこが投資家向け説明会の場で論点となっているように思えません。

摩訶不思議です。

資本の配賦と実際の資本の使用状況を出している地域金融機関の数値を見ると、資本の未使用部分が大きいことに驚かされます。

数年前、地域銀行Xが行った決算説明会の資料では、資本配賦・資本の使用額がしっかりと記載されており好感を持ったのですが、「自己資本に対するリスク量は〇〇%で健全な水準で推移」との但し書きがあり、ガックリしました。

「なんじゃこりゃ」です。

資本の未使用部分が大きい (〇〇が小さい) ことを、「健全性の高さ」だと臆面もなく記載することに、何の疑問を感じていない銀行経営者のセンスを疑うとともに、説明会の席上、未使用資本の多さを銀行に対し追及する証券アナリストや投資家がいないことにも驚愕しました。

「未使用資本が多くて健全ですね」などと寝ぼけまなこで頷くのではなく、「未使用資本は買入償却して、一株あたりの価値を上げろ‼️」と迫るべきではないでしょうか。

地域銀行も投資家サイドも『資本リテラシーの向上』が課題です。

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《番外編》

蛇足ながら、「資本の未使用部分が多く健全だ」と明言した地域銀行Xは、その後に同じく資本の未使用部分が多い地域銀行Qと資本統合しました。そもそも合併統合などの再編の狙いは、資本を一緒にすることで資本余力をつけてリスクテイクの質量を上げ、収益の拡大を目指すことにあるのですが (株主はそれを期待するのですが)、資本の未使用部分が多い銀行同士が資本統合して、いったい何を行うのでしょうか???

XとQとで形成される持株会社からは資本統合ならではのリスク資本を思い切って投入する施策が出されている形跡はありません。だったら未使用部分は買入償却することで株主価値を上げろというプレッシャーがかかるのでは、、、

余計なお世話といわれるでしょうが。

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