顧客本位の事業承継

連休中は某経済誌の連載コラムを書いていました。

「事業承継が手数料ビジネスでは廃業の嵐は止まらない」

との話を組み立てようと、2017年版の中小企業白書にあたりましたが、改めて地域金融機関の事業承継への取り組みと現実との間に大きなギャップがあることに気づきました。

2013年から2015年までの期間で、廃業直前の売上高経常利益率(= 利益率)が判明している企業 (6,405) の中で、利益率プラスの状態で黒字廃業した企業の割合は何と50.5%。

半数超の企業が廃業前は黒字なのです。

さらに黒字廃業企業の3割強の廃業直前の利益率が、生存企業の利益率の中央値(2.07%)を上回っていたというデータを見せられると愕然とします。

地域金融機関も事業承継を喫緊の重要課題と位置づけて、それなりに動いていますが、多くの金融機関がこれをフィービジネスとしてとらえ、M&Aなどの手数料収入が期待できる規模の事業者にばかり目がいっています。

しかるに黒字廃業企業のうち、約7割が従業者数5人以下、20人以下となると9割を超え、このゾーンだとM&Aなどの手数料ビジネスの対象になる事業者数は限られています。

この層での事業承継で問題となるのは、間違いなく『経営者保証』です。

経営者保証がネックとなり後継者がみつからず、黒字・高収益でありながら幕引きとなった小規模事業者が多いという現実を重くとらえねばなりませんが、金融機関をモニタリングをしている金融庁サイドからは、

「事業承継において、事業内容を十分に見ることなく、新旧経営者から保証を二重取りしていたり、担保でフルカバーされている先から個人保証を機械的にとっているケースがほとんどだ。」

という話が入ってきます。

地域金融機関の多くが事業承継の分野においても、自己中心 (手数料収入にしか目が行かない) であることは否定できません。

顧客本位の業務運営の一環として、事業承継の取り組みも抜本的に見直すことが求められます。


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コメント

  1. ミザール より:

    金利で稼げなければ手数料値上げで少しでも収益を確保せざる得ないというのが今の地域金融機関です。

    本来は信金・信組は会員制・組合員制ということを考えると、手数料等を無くすか、銀行より安くするのが会員・組合員の相互扶助精神の一つの形です。

    また事業承継支援も会員・組合員の仕事・生活の安定と向上のために、信金・信組としての相互扶助活動の一環として対応すべきことで、手数料というよりはある程度の必要経費をいただいて、資金原価以上の適正融資金利での対応をするべきこと。

    しかし組合員と役職員の信頼関係の薄さから、現状組合員・会員は単なる商売対象となっているのが現実です。金融機関経営者の強い志が必要。ただこの志を推し進めるためには、地域金融機関役員の連帯が必要と思います。そうした役員さんが多くなってくれること期待です。

  2. 旅芸人 より:

    おっしゃる通り、協同組織金融機関には原点に戻っていただかないと困りますね。地域銀行の真似しかやらないのならば、軽減税率の適用外とすべきでしょう。