自己資本比率の次に来るもの

何度かこのブログで書いているのですが、金融行政方針29 では、金融行政の視野を、「形式・過去・部分」から「実質・未来・全体」へと広げる、新しい検査・監督を示しました。

預金取扱金融機関についていえば、行政手法は、自己資本比率 (過去の結果指標) を基準に発動する早期是正措置から、将来の健全性につながる持続可能なビジネスモデル (顧客本位でなければ捨てられる) の構築に向けての金融機関と金融庁との対話へと変化します。

《ビジネスモデルの持続可能性等に深刻な課題を抱えている》地域金融機関に対しては、検査を実施し、課題解決に向けた早急な対応を求めるのです。

当該行政方針の地域金融機関の項には下記の文言があります。

「持続可能なビジネスモデルの構築に向けた取組みが進まない場合、足下ではバランスシートの健全性に問題がなくとも、将来的に顧客基盤や収益基盤が損なわれることで問題が生じ、その結果として、地域において十分な金融仲介機能を発揮できず、地域経済や利用者に多大な悪影響を与えることにもなりかねない。」

ところで、《ビジネスモデルの持続可能性等に深刻な課題を抱えている》を何をもって判断したら良いのでしょうか。

ビジネスモデルというのは多様性、独自性があり、客観性に乏しく、横串を入れて比較できるものではありません。深刻な課題を抱えていると指摘しても「見解の相違」と切り返されることになるでしょう。

早期是正措置であれば自己資本比率という客観的な数値がありますが、自己資本比率の代替として何が考えられるか?

ずばり【早期退職者の増減】が良いのではないか、

このように考えています。

人材が最も重要な金融機関の資産 (無形) であり、その無形資産が融資や有価証券運用という有形資産の土台となる以上、土台がグラついている金融機関は《ビジネスモデルの持続可能性等に深刻な課題を抱えている》と判断できるのではないでしょうか。


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コメント

  1. ミザール より:

    源泉は人にあります。

    早期退職者の増減という指標は金融機関経営者には大きなインパクトになるでしょう!!!

  2. 旅芸人 より:

    ミザールさま、

    金融庁に提言してみようと思います。

    旅芸人

  3. 即身成仏 より:

    新卒学生に収縮先として人気のある一流地域金融機関なら、早期退職者の増減という指標でもよいのですが、拙生の勤務先では公務員や教員の採用試験におちて採用になった新入行員が少なくなく、入行後合格すると退職していきます。

    この傾向はマクロの雇用環境に大いに影響を受け、雇用環境がよくなるほど、地元上位地域金融機関に地域金融機関第一志望者が流れますので、上記腰掛け新人が私の勤務先では増えます。雇用環境がよくなると、私の勤務先では早期退職者は増えることになります。

    こういう指標はせめて地元トップ地銀限定での対応をお願いしたいところです。

  4. 山猿 より:

    就活生は皆一様に夢や希望を求めて就職先を探しています。彼等は若く未熟である事を自覚しながらも、その会社で自分の夢を叶えたい、会社や社会に貢献したい、と一生懸命リクルーターにアピールしてきます。また会社は会社で美辞麗句を唱えながらではありますが(笑)採用活動を行っています。そうした中で採用された人が早期に辞めていく・・・。

    この会社で自分の夢が叶う、社会に貢献できる、そういう会社であれば簡単には辞めないと思います。社員幸福を生み出し、それが顧客幸福を生む、この好循環が持続可能なビジネスモデルなんでしょうね。