2001年に八代さん (八代アソシエイツ代表) と共著で「地域金融 最後の戦い」を日本経済新聞社から出した時に、
「地域金融機関は、地域の経営コンサルタント的な側面を鮮明に出していくべき」
と主張したことを思い出します。
この本が契機となって、ワタシは金融庁の仕事をすることになりました。
昨日のブログで書いた通り、地域の経営コンサルタントはフィールドワークを地道に積み上げながら、ファクトを見つけ出し、処方箋を考えていく「町医者」のような存在だと思います。
その手法は「職人」そのものです。
地域金融機関を早期退職し、コンサル業界を目指そうとする若者から相談があるのですが、
「あなたのやりたいことは職人でしょ。でもコンサルティング会社 (とくに大手) において職人の文化はないよ」
とアドバイスをしています。
7年ほど前にお目にかかり、お話をうかがった、ある人間国宝の方の言葉を思い出します。(この方は数年前に鬼籍に入られました。)
「この工房で働いている『職人』は地元民がほとんど。親子3代のように代々にわたって働いている人もいる。知り合いの紹介によるケースも多い。終身雇用形態で途中離脱者はほどんどいない。一人前となるのは50代になってから。分業体制であるため、全員での共同作業となる。分業工程の中には20代、30代でもできる仕事もあるが、それを習得したとしても一人前ではない。職員たちは家族みたいなもの。作家を希望して、とりあえずここで修行するという腰掛け人間は、今も昔もいない。」
地域金融機関の目指すものとの相似性を感じます。
金融商品をパワーセールスで売るというのは (それも過大なノルマを張って)、職人の世界とは程遠いものです。
地域金融機関が職人の世界からどんどん乖離していくことを、絶望的な気持ちで凝視しています。