提携先とのCSVか、地元顧客とのCSVか

先週の、ソリューション営業に関する論争 (本ブログにおける7/25「竹内さんの著書」、7/26「議論が白熱」のコメント欄をご参照ください) は思いのほか盛り上がりました🔥🔥🔥

論争を見て、感じたことを書いてみます。

寺岡さんのご主張はまさに正論であり、あるべき地域金融マンの姿です。

かくいうワタシも、

「こういう地域金融マンの集団を作り上げよう。それこそが組織的継続的なリレバンだ。」

と関与している地域金融機関には繰り返しハッパをかけ続けています。

一方、即身成仏さんは、

「プロダクトアウトの物売りとしての訓練しか受けておらず、上司もそれしか分からない。そんな金融機関の人間に、顧客ニーズを対話の中から発掘し、的確なソリューション提供なんて無理だ。正論はわかるがそれが現実だ。」

と投げやり気味に応酬しています。

確かに、ワタシの熱弁を、うつろな目をしてシラケた表情で聞いている人たちが多い地域金融機関があることは否定できません。

想像するに、即身成仏さんはその中の1人なのでしょう。

こういう人たちがマジョリティの組織では、

「顧客との対話の中から顧客の抱える課題を拾い上げてソリューション案を考え、ソリューションによって顧客の企業価値を上げる」というような“難しい手法”を追い求めるのは諦めて、

単純明快なプロダクトアウト型に落とし込むしかないと編み出した苦肉の策が、

「提携先リストによる押し売りスタイルのソリューション営業」だと、

ワタシなりに解釈いたしました。

しかしながら、顧客ありきではなく、提携先ありき、そこからのメリット還元ありき、である以上はリレバンでもなんでもありません。

リレバンというのは、地元のお客さまとの共通価値の創造(= CSV)であって、提携先とのCSVではないのです。

提携先とのCSVは、行き過ぎると地元顧客に対する優越的地位の濫用の温床にもなりかねず、禁じ手となります。ここまでくるとアウトです。

さて、

リレバン (地元顧客とのCSV) を単純明快なプロダクトアウト型に落とし込んだ好事例はないわけではありません。

南日本銀行 (本店鹿児島市) の「Win Win ネット」です。さらにそれと同じコンセプトを取り入れた豊和銀行 (本店大分市)、宮崎太陽銀行(本店宮崎市)です。

3行とも金融機能強化法による公的資金で資本強化しており、ワタシ (公的資金の審査をしています) は長年にわたって経過観測しているのですが、ワタシの評価では公的資金活用の優等生です。

3行のビジネスモデルは、地元顧客の商品サービスの売上げを増やすというシンプルなものですが、それを組織的継続的な活動とし、そしてそこに一点集中して徹底的に注力するものです。

多くの金融機関がこれ見よがしにやっているような、ビジネスマッチングフェアを開催してお茶を濁すというイベント型ではありません。

まさに地元顧客とのCSVであり、顧客の商品サービスの販売支援のためには、その中身をしっかりと理解しなければならず、事業性評価 (ワタシはこの言葉は好きではありません、事業理解の方が適切です) が前提となります。

この3つの銀行はこのビジネスモデルで業務提携を結んでおり、このブログでも「日豊アライアンス」(5月8日) として紹介しています。

「提携先とのCSV」と「地元顧客とのCSV」、その違い (すなわち、リレバンの真贋) をしっかりと見極めたいものです。


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コメント

  1. 寺岡雅顕 より:

     「正論は机上の空論であり、現場を知らないものの遠吠えだ」と、即身成仏さんはおっしゃりたいようです。

     しかし、わたしは10数年前から業推無罪と戦い、地道に行員に正論の大切さを訴えてきました。

    約10年前、2050年の生き残りに危機感をもった一部の上層部が共感を感じてくれて、職位定年直前の私に、融資人材の育成を全面的に任せるということで、残留をすすめてくださいました。その後、60歳の本定年後の2年間を含め通算で6年間、母体行の若手人材育成に直接かかわっていました。延べ1万6千人以上が自由参加の土曜日のセミナーにもかかわらず、熱心に勉強してくれました。まさに共感の賜物だと思っています。

     一機に方向が変わることはありませんが、いま、少なくとも他行と比べると「だいぶマシ」だと感じることができます。

     彼らも中堅に差し掛かり、そろそろ支店長も出始めています。これからが母体行の変革の本番です。

     現場を知らないまま、理想論や正論を展開しているわけではありません。

     

  2. 山猿 より:

    即身成仏さま

    私は貴方自身が本当に『出来ない理由ばかり言う銀行員』に成り下がっているようには思えません。もしそうなら、あそこまで問題と思われる部分を書き上げる事はできません。

    できれば部下の方と一緒に、それこそ『貴方の銀行の本業の妨げ』にならない程度のことから何か始めてみませんか?貴方の知識を基にお客様に『僕ならこうしてみますけど』とちょっとしたサジェストを行うとか、『こんなケースが他でありましたけどお客様も試してみたら?』とか・・・。

    そして外部の組織(公的支援機関とか保証協会とか)を巻き込み、自らの『本業(?)』を遂行しながらでもそれらの輪を広げていく事ができたら、そしてお客様が貴方のことを『自らの知的資産』と認めてくれたら、その活動を一体誰が止めることができるでしょうか?

    寺岡先生もおっしゃっておられたように10年かかる仕掛けかもしれませんが、始めがなければ、永遠に何も起こりません。

    もし同じ地域に住んでいるのであれば、私もお手伝いしたいです。

  3. 橋本卓典 より:

    山猿さんのおっしゃる通り。いつからでも始められます。私が取り上げている銀行、信金、信組も完全無欠の金融機関では決してありません。悩み、失敗しながら前に進んでいます。遠からず、預金送金決済は大都市圏から銀行の手を離れます。行動すると不思議なもので、繋がりから「巻き込む力」「巻き込まれる力」が予想以上の推進力となります。