企業文化に切り込んだコーポレートガバナンスコードを求む

英国で上場企業の経営規範であるコーポレートガバナンスコードが改められ、2019年1月以降を始期とする決算期から適用されることになりました。

2015年に導入された日本版コーポレートガバナンスコードは、そもそも英国流とも言われ、ワタシも今回の英国の改定には注目しています。

この週末にいろいろと調べてみました。

さて、

地域銀行のコーポレートガバナンスコードの取り組み状況を見ると、ほとんどが「すべて comply (遵守する) 」であり、コードの本質を突き詰めることよりも形式を整えるだけでお茶を濁しているように見えます。

ここでも地域銀行のお家芸?ともいえる「なんちゃって」。

ワタシの関係する某銀行は地域銀行の中でも explain (説明する) が多いようですが、explain として上がっている項目は、取締役会や社外取締役がそれなりに機能していれば、comply の必要なしと思います。

たとえば、独立社外取締役会や筆頭独立社外取締役、ワタシの経験上、必要性があるとは思えません。コーポレートガバナンスコードに書かれているから、設置しているところが多いのではないでしょうか。

まさに、形式主義。

ところで、

英国の今回の改定は、企業の利害関係者(ステークホルダー)として従業員を明確に位置づけた点がポイントなのですが、従業員すなわちヒューマンアセットが推進力となる企業のサステイナビリティを見据えているものと考えられます。

ヒューマンアセット、それを活性化させるエネルギーともいえる組織文化や企業文化に、コーポレートガバナンスコードが切り込むことには大きな意味があります。

スポーツ界での数々の出来事もそうなのですが、スルガ銀行の報告書からもわかるように、地域金融機関においても、パワーハラスメントの横行が組織文化、企業文化の歪みをもたらし、組織や企業にとって最も大切なヒューマンアセットが破壊されているのです。

「CS も ES も」口先だけで、虚しさしか残らないのは、スルガ銀行のみではありません。

地域金融機関のサステイナビリティ、さらには地方創生の視点からも、地域金融機関の崩れ堕ちた組織文化や企業文化を、速やかに再構築しなければとんでもないことになります。

英国の改定を同様の観点から、日本においてもコーポレートガバナンスコードの見直しが必要となるでしょう。

 

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コメント

  1. 橋本卓典 より:

    となると、我々はこれまでの計測手段を変えなければなりません。計測してこなかった領域を計測するとは、どういうことなのかを考えなくてはなりません。

    そして、スルガ銀行の調査報告書は「意図的に」かは存じませんが、重大な点が欠落しています。前年以上の高い成長を前提として営業目標、営業ノルマが形成された真の理由を突いていません。それは、「市場全体が担いだみこしから降りることができなくなった」ということです。多かれ少なかれ、どの銀行、どの企業でもこの素地はあります。スルガは、自ら自制することもできず、市場(空気)もそれを許さなかったことが最大の要因だと思います。ご案内の通り、著名なオピニオンリーダーの方や有識者の方が社外取締役に就いていましたが、6月に退任し、本件については何も語っていません。

    本来、この自制は創業家一族だからこそ発揮できる良心かもしれないものですが、そうはなりませんでした。中小企業のほとんどは創業家ですし、何百年も続く、京都の老舗も創業家です。故に創業家=悪という短絡的な問題ではありません。企業統治を問うならば、上場が組織文化にもたらす弊害、副作用さえ、議論しなくてはなりません。

    「みこしから降りられない」―。このことが組織の破壊行為・営業の暴走を招いたのです。「持続可能性」と「任期中に最大の成長を求められる経営陣」とのミスマッチをどう是正していくのか。企業統治は、飽くなき欲望と良心による自制という「計測できない世界」の問題を突きつけられます。

  2. Hさん より:

    リレバンの本質を端的に示しているような言葉はいくつかありますが、個人的に白眉だと思っているのが、「荘子」の『日計すれば足らず、歳計すれば余り有り』。

    今回のスルガ銀行さんは日計(短期的な収支)に拘り過ぎたあまりに、組織の大勢で本当に大切な何かを見失ってしまっていたのでしょう。

    ところで上記の「荘子」の言葉、刻々と変化する相場と向き合う際の極意の一つに挙げている投資家も見受けられます。してみると、日計に拘っては“いけない”存在であるはずの地域金融機関が、日計には拘っていない市場の目を気にして何故か歳計を疎かにする、すなわちリレバンと逆行するような動きをしているのは、ESG投資に対する意識が高まってきている昨今の情勢も鑑みるに、甚だ奇妙に映ります。

  3. 寺岡雅顕 より:

    地域金融の本質的な課題は「組織文化の変革と人づくり」と思っています。

     しかし、もう一つ重要な視点があります。

     「金融機関は数字ばかり見て、事業を見ていない」として、「事業性評価に基づく融資(事業性評価融資ではありません)」の必要性が説かれました。しかし、残念なことに多くの金融機関は、「数字すら読む力を失った。否、数字すら見ようとしない」という実態があるということです。

     決算書を会計ではなく、ファイナンスの視点でとらえる力を取り戻す努力が必要です。

     「資金の必要理由が把握できない。資金使途と返済財源および返済期間の関係が理解できない」といった現場の実態と向き合うべきです。