問題先送りで問われる経営責任

昨夕、日経電子版で、大阪信用金庫の「貸出ノルマ 7割減」の記事を見ました。

ワタシの同信用金庫のイメージは、不動産関連融資を中心とした、典型的なプロダクトアウトのボリューム追求型というものだったですが、課題解決型のリレバンへの“大転換”と推察します。

これを組織的継続的なものとして定着させるには、試行錯誤の連続であり、相当の時間とエネルギーを要すると考えますが、何はともあれ大きな第一歩だと考えます。

どこの地域金融機関も、いとも簡単に同じことを口に出すのですが、それを本気で実行に移しているところは、まだまだ限られています。

経営陣の中に「目先の収益が落ちるのでは」との恐怖心があることが理由であり、その可能性を否定するつもりはありません。

しかしながら、目先の利益減少で責任追及されるよりも、問題の先送りをすることの方が、はるかに経営責任を問われるのではないでしょうか。

結局のところ、経営トップが決断できるかどうかにかかっているのです。

本記事でポイントとなる箇所を列挙します。

〜 IT(情報技術)大手など異業種の金融業参入も相次いでいる。大阪信金も「今後3~5年で既存金融機関の業務の多くは奪われる」(高井嘉津義理事長)との危機感があった。

〜 「若い世代ほど地域活性化や中小企業支援への意欲が高く、融資に傾倒した仕事に嫌気がさしてやめていく」(高井理事長)。職員約1400人のうち5割を20~30代が占めるため、若手がモチベーションを維持するための取り組みが急務だった。

〜 ただ、利益面では当面厳しい状況が続きそうだ。大阪信金の純利益は15年3月期以降、90億~100億円程度で推移していたが、19年3月期は75億円程度に減少する見通しだ。

〜 融資などの営業ノルマを巡っては、京都信用金庫が2017年4月から撤廃に踏み切った。「顧客の経営課題の解決に取り組むには短期的な目標が邪魔になる」(担当者)との考えが背景にある。18年3月期の業績では貸出金利息、役務取引等収益ともに前期より減少したが、「軌道に乗るまで一時的な落ち込みは仕方がない」との姿勢だ。

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このような顧客本位の地域金融機関は、顧客から見捨てられることはありません。

ワタシは、こういう金融機関を応援します。


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コメント

  1. 寺岡雅顕 より:

    1昨日某地銀で聞いた話です。

    頭取の指示で先進的な地銀に専務を含む幹部3名がヒアリングに行かれたそうです。

     「短期的な収益をおわない」という方針が明確に示され、事業性の理解についても、2段階にとらえ実践している現場をみて衝撃を受けて帰ってきたらしい、というお話でした。

    「一階部分ですら周回遅れを感じた。2階部分は、とてもマネができない」と舌を巻いたということです。

    「営業戦力を支店から割き、研修を行う」ということに批判的であった経営から、人材育成について考え直すように指示があったそうです。

    この地銀では融資部の問題意識から、融資部の腕力の及ぶ範囲で、4年前から研修を受諾してきましたが、来期からは、大きく変わりそうです。

  2. 竹内心作 より:

    大信さんとは10年に渡り、府内信金合同ビジネスマッチングフェアという展示会でご一緒しています。

    合議制で運営しているのですが、最近は部会で「いかに顧客にメリットのある取り組みにするか」を積極的に発言してくださいます。

    他の信金もその言葉に耳を傾け、良い流れで部会が進んでいます。

    (展示会で本業支援のお茶を濁すことは、あまり好きではありませんが、それでも最近はなかなか良い事業に仕上がっています)

  3. 竹内心作 より:

    もう一言だけ。

    プロダクトアウト型金融機関の管理職研修では、

    「自分の大切な人(例えば、部下、後輩、場合によっては子ども)に、どのような営業環境を残したいか考えて営業してみてはどうでしょうか」と申し上げています。

    当然、顧客との信頼関係を破壊する、押し売り型のソリューション営業なんかできなくなります。

    大切な人には、顧客とうまくリレーションが取れている素晴らしい環境を残したいはずだからです。

    多胡先生の記事を読んで、経営陣にもこの感覚が必要だと感じました。

  4. 森脇ゆき より:

    経営陣が営業ノルマを撤廃できない理由の一つは、その行動が中長期的な利益を生むという確信がもてない。ということではないでしょうか?

    現場には問題意識がある若手がいる一方、もはや会社のルールが自分の生きる指標になっているベテラン職員や管理職等がいます。

    そのよう人達にとっては目標撤廃などはただの”会社のルール”でしかなく、厳しいノルマを課せられることと何ら思考に変化がないという可能性があります。

    そのように育てあげてしまった?職員に対して今更「良い金融」と言ったところで、意味が通じない可能性を恐れているのではないでしょうか?

    解決策は、多胡さまのブログ2018年11月15日「支店が主役」にあると思います。

    私はやりがいを持って働く金融機関人を応援しています。(蟻ほどの力もない者です)

  5. 森下 勉 より:

    外部から見ていて、多くの金融機関は視野が狭いと感じています。

    ノルマが無くて業績の良い会社は山ほどあります。

    それらの事例から学べば、新しい視野が広がります。

    また、それらの企業に共通する風土は「考える」です。

    多くの金融機関は「考える」が身についていないのでしょう。

    護送船団方式で進んできた弊害なのでしょうね。