地域顧客の皆さんへ、合併に際しては融資ポリシーの確認を

架空の話、

とは言い切れませんが、、、、、

某県の信用金庫 X が、隣町の信用金庫 Pと合併する話です。

同じ信用金庫のいえども、 X と P とでは経営方針 (とくに融資姿勢) に大きな違いがあります。

X は規模の拡大がないと生き残れないとの意識が強く、リスクの低い先を中心に低金利融資を積み上げていますが、信用リスクの判断に労力を要する事業者向け融資や、業況の厳しい事業者に対する経営改善や事業再生といった、手数のかかる業務には消極的です。

一方、P は自身の規模へのこだわりはなく (信用金庫は業界としてのバックヤードの共同化が進んでおり、わざわざ合併する必要がない)、誠実で真摯な経営を行なっている事業者であれば、小規模事業者 (取引効率が悪いと考えがち) であっても、また業況が悪化しても、逃げずにしっかり面倒を見ています。

金融庁の範疇でいえば、X は「金融排除型」金融機関であり、Pは「金融包摂型」金融機関になります。

経済環境が芳しくない昨今、P は地元中小小規模企業には頼りになる存在です。

さて、

両金庫の合併に際し、P の融資方針が新金庫の融資方針となる場合には、金融包摂の地域が広がり、X の顧客にとっては金融排除から金融包摂モードに変わり、ありがたい話です。

当然、このケースでは合併自体に大義があります。こういう合併は応援したいです。

ところが Xの融資方針が新金庫の融資方針になろうものなら一大事です。

P 信用金庫の地域において、金融排除が誘発されることになります。これは由々しき問題です。

こういうケースでは Pの地域顧客は絶対に黙っていてはいけません。取り返しのつかないことになります。

また、

「合併による余力が顧客に還元されるから顧客にとってメリットある」

という常套句はマユツバものです。。“余力の見える化”と“顧客還元のタイムスケジュール”が、合併金融機関から示された例は聞いたことがありません。結局はうやむや、余力の大部分は金融機関のポケットにスーッというのが過去の歴史です。

地域顧客の金融リテラシーが問われる重要なところです。絶対に騙されないように。

合併のゴーサインを出す前に、当該地域の顧客は総代会などで、合併後のビジネスモデル (とくに融資ポリシー) をしっかり確認するのは基本動作です。

基本動作を怠ったら大変なことになります。

絶対に忘れないように。


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コメント

  1. 寺岡雅顕 より:

     【合併後旧P金融機関のお取引先用に、旧Pの本店の中に第2融資部を作る?】

     こんなことを事業計画に織り込み、批判をかわそうとする動きがあるとすれば、お取引先を馬鹿にするのもいい加減にして欲しいですね。

     数年後、間違いなく、第2融資部は廃止され、その時、気が付いても遅いのです。

  2. Hさん より:

    合併に向けた取り組みとは、極論すると「ダブルスタンダードの解消」と、それに伴う「顧客影響のケア」です。

    寺岡さんのご指摘の通り、ダブルスタンダードは遅かれ早かれ解消に向かうことになります。

    尤も、その際に「両方の良いとこ取り」といった、弁証的な止揚が必ずしも生じるとは限りませんが。

  3. 高見守久 より:

    私が在職していたK信金とM信金との合併が当局の認可により認められ、今月25日に発足します。非常に広域な営業エリアを有するものとなります。私の祖父は太平洋戦争の際には中国大陸で兵役に就いていました。そのこともあって、今回の合併については、営業エリアが広すぎて、兵站が間に合わない。つまり、信金側の都合だけでお客様の利便性を損なうのではないかと懸念しています。フィンテックの進展は凄まじいもので、信用金庫という業態の存在自体が無くなるのではないかと危惧しています。私は20年前の資産査定部署に在籍していたときに、日銀考査でいまどき預金を集めてどこに貸すのですかと言われました。その後も預貸率はじり貧です。これからの金融パースンは自らコンサルティング能力を向上させて、お客様に対し親身になって相談できるようになり、中長期的な視野に立って営業できるようにしなければなりません。また、業態を問わず、優秀な人材が転職できるよう、地方でも人材の流動化が容易な金融業界になってほしいものです。