似て非なるプロダクトアウト

テレビ東京/カンブリア宮殿のバックナンバーを見ました。

味噌のトップメーカー(国内シェア25%)、長野市にあるマルコメのはなしです。

「我々のビジネスはプロダクトアウトですよ」

プロダクトアウト?、

青木社長の言葉に引っかかりましたが、ストーリー展開の中で、同じプロダクトアウトでも、地域金融機関のそれとはまったく異なるものということが分かりました。

マルコメのプロダクトアウトは、マス顧客を対象とし非対面、その中で常に新しい商品の“開発”に挑戦するものなのです。

出汁入り味噌、ペットボトル入りの液体の味噌、糀甘酒、そして大豆ミートと新しい分野へのチャレンジの連続には驚きました。

そして、若い人材の感性が“開発”の中に生かされていることにも感動しました。

このような開発型のプロダクトアウトは地域金融機関にはかなり難易度が高いことは否定できません。

地域金融機関の場合、ネットチャネルを除けば、ヒトとヒトの対面によるつながりがベースにあり、マルコメのように商品を店頭に並べて顧客に選んでもらうプロダクトアウトではなく、商品そのもの以外のところで競合他社とも差別化を図ることになります。

だからこそ、経営は顧客接点となる人材が意欲を持って創意工夫ができるような環境を作っていかねばなりません。

「当社のプロダクトアウトは手前味噌です」

青木社長のギャグには村上龍さんも笑いましたが、開発型プロダクトアウトとは程遠く、ますます自己中心に拍車がかかる (優越的地位濫用型) 地域金融機関のプロダクトアウトは、とても手前味噌(自慢する) とは言えません。


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コメント

  1. 八代恭一郎 より:

    プロダクトアウトというのは、マーケットの顧客のニーズに対応できると売り手が考えた商品サービスの少品種大量生産・供給というのが本来の意味であり、青木社長の言い分はごもっともです。

    地域金融で横行するプロダクトアウトも意味するところは同じなのですが、①顧客ニーズに対応できると地域金融機関が考える際のツメが甘い、②ツメが甘いゆえに売れ行きは悪いが、それを貸し手の優越的地位が埋めるというプロダクトアウトであるところに特徴があります。

     ①は金融機関と同様、取引先事業者はレバレッジを増やしてまでも収益を増やしたいと考えていたり、どんな事業者であっても事業運営の中でメインとする取引銀行の選定や貸出金利水準は大問題なので、銀行決算動向や公表されているベンチマークや顧客本位の業務運営の原則は大いに関心を持ち、注意深く確認したがるものと考えていたりすることから、「安定的な資金供給」や「コンサルティングサービス提供」というニーズを自信満々で割り出しています。

     割り出したニーズで、顧客価値提供が十分であれば、プロダクトアウトのマルコメばりに儲かっているはずでしょう。行政も収益の先細りを心配する状態から、地域金融のニーズ分析のツメはマルコメより甘いのかもしれません。

    それを何とかマルコメが販売先には持つことのない魔法の杖”貸し手に対する優越的地位”を(濫用に注意しながら)活用していくのが、地域金融で横行するプロダクトアウトと理解しています。