続 奇策?

昨日のブログ「奇策?」で、金利スワップ、クーポンスワップなどのデリバティブ取引が顧客本位でないとすれば問題あり、との指摘をしました。

何をいまさら、そんなのは当たり前ではないかとのご指摘もありますが、最近、この辺りの認識が甘くなっているように思えるのです。

16年半前に金融庁においてリレーションシップバンキングの議論を行なっていた時期、銀行のデリバティブ (スワップ取引) の取り組み姿勢が大きな問題になっていました。優越的地位の濫用によるデリバティブ取引の強要ではとの疑念です。

リレーションシップバンキングのあり方の議論の中で、コンサルティング業務や本業支援業務への扉が開くことになったのですが、そこでもコンサルティング業務などの優越的地位の濫用による (手数料目的の) 強要への歯止めがしっかりとかけられています。

《金融機関が、リレーションシップバンキングの機能の一環として行うコンサルティング業務等取引先への支援業務が付随業務に該当することを明確化するとともに、その際、中小企業等顧客保護や法令等遵守の観点から図るべき態勢整備の内容を規定した。~中略~

なお、実施にあたっては、顧客保護や法令等遵守の観点から、以下の点について態勢整備が図られている必要があることに留意すること。

⑴ 優越的地位の濫用として独占禁止法上問題となる行為の発生防止等法

令等の厳正な遵守に向けた態勢整備が行われているか。》

(2003年6月30日の金融庁の事務ガイドラインより)

昨今、優越的地位の濫用が背景にあるデリバティブがらみのADRは激減しているように見えますが、油断してはいけません。

デリバティブ取引にドライブをかけて現場を走らせ、その収益で合併費用に充てるとの考えがもしあるのならば (考え過ぎかもしれませんが)、顧客本位の業務運営の視点から懸念を持たざるを得ません。

 


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コメント

  1. 寺岡雅顕 より:

    昨今の与信コストの反転で、再び時計の針が逆進する気配を感じています。

  2. 東北の銀行員 より:

    私は顧客に対する本業支援の一環としてコンサル的なお手伝いもしております。

    これは顧客の同意があれば無料でやっていますが、結果として大きなメリットがあります。

    コンサルティング業務の中でも特にPLの改善に影響が大きいビジネスコンサル支援については「本当にそれを必要としている顧客」に対して行うことが大前提なのですが、銀行が手数料ビジネスとして行う場合そうはならないような気がします。

    現状では、優越的地位の濫用とまでは言いませんが比較的リレーションが効いている(と思い込んでいる)顧客に対し単なる販路紹介やビジネスマッチング等を押し込み、顧客から忖度のこもった感謝の言葉と手数料をいただいて「当行はコンサル支援を行っております」と言ったところもあるのではないでしょうか。

    しかし、そもそも顧客の「儲かる仕組み作り」に目を向けないまま販路紹介やマッチングにより一時的に売上が増加したとしても、これは銀行が「推進により収益を出す」ことと同様、顧客にとって持続可能なビジネスモデルとはなり得ないのです。

    先ずはしっかりと顧客の事業に目を向け、一緒に「儲かる(儲けるではなく)仕組み作り」を考え、その実行支援までお手伝いすることです。

    そしてそれが上手くいけば、例え手数料を頂かなくても営業推進をしなくても、その顧客はビジネスの相談は全て自行に来るようになり最終的には収益に繋がるのです。

    ただ、私は経験則としてそう言い切れるのですが、何しろ結果が現れるまで年単位の時間を要します。

    顧客本位のコンサルティング業務は、時間軸の概念がない「自分本位銀行」や「営業推進銀行」にとって非常に難しい事業分野であると思います。

  3. 新田信行 より:

    前職でデリバティブ問題の最前線で、その解決にあたっていた私にとって、中小企業に対するデリバティブは悪夢でしかありません。中小企業にとって、本当にデリバティブが必要なケースは極めて稀です。素人が金儲けのために手を出してはいけない領域です。ちなみに、GABVはデリバティブを扱っている金融機関は、メンバーになれません。