ビジネス・ラウンドテーブルの声明

本日の日本経済新聞に、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のニューズレター「モラル・マネー」8月21日号の「脱・株主第一主義宣言」のサマリーが掲載されています。

周知の通り、西側諸国の政界からの「企業エリート」や「キャピタリズム」への激しい批判に対し、「ビジネス・ラウンドテーブル」(米主要企業の経営者団体)が「株主第一主義」を見直し、企業がより幅広いステークホルダーに配慮することを推奨する声明を出しました。

これに対し、今後、経営陣や投資家が環境や賃金格差などの問題により積極的に取り組むかどうか、モラル・レターの筆者は懐疑的です。

理由は「経営陣の給与が異常に高い」「企業の納税額が十分でない」といった問題について触れていないところです。

とはいえ、国連がSDGsを全会一致で採択したこともあって、米国主要企業といえどもこれを無視することはできず、流れは止められないでしょう。

さて、

日本の地域金融機関の場合、経営陣の給与や納税額というところが焦点になるとは思えませんが、時間軸を持った「地域の持続と成長」と「地域外の株主の利害」との不一致に苦慮する経営陣としては追い風となることは間違いありません。

そして、

顧客本位の持続的なリレバンこそが地域金融機関の「SDGs経営」との主張を続けているワタシとしては、株主の声を言い訳になんちゃってリレバンでお茶を濁し、その実は自己本位のプロダクトアウト型のビジネスモデルにうつつを抜かすレイジーバンクの姿勢に一石を投じることを期待しています。


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コメント

  1. 増田寿幸 より:

     今回のビジネスラウンドテーブルの声明はじっくり考えてみるべき内容だと思います。まずは「all of our stakeholders」にコミットすると宣言する点が鮮烈です。橋本さんの言うように「三方良し宣言」です。昨日の多胡さんの「企業が社会の役に立つ」をより重視するという方向です。JPモルガンが「value to our customers」と言うのですからGAVBも新田理事長もびっくりです。

     さて、私の関心は、なぜこんな方向への方針転換を全米の主要企業経営者会合が決めたのかという点です。これが声明を理解するうえで欠かせないと思います。

     私の仮説は、ネットフリックスやアップルミュージックの成功があるのでは、だから181人にアマゾンやアップルが当然に加わっているというものです。彼らは新興国とのコモデテイ競争から逃れようとしていると思います。

     言葉を替えれば「売り切りビジネス」から脱却し顧客や社会との持続的なビジネス関係の形成を基本戦略にしようとしている。だから三方良しなのです。

     最近日本でもサブスクリプションに関するビジネス書が増えているのはこの傾向だと思います。そして言うまでもなく、これは、トラバンの終焉、リレバンの発展、でもあるのは多胡さんの指摘どおりです。

     だとしたら、今回のラウンドテーブル声明の周辺にはリレバン強化に資する議論がそこここにあるはずだと私は思います。

  2. 橋本卓典 より:

    米国在住の事情通に聞いてみました。事実は多面的で、「これがすべて」とは申しませんが、面白い切り口です。

    ラウンドテーブル声明は、米国では「スルー」(笑)現地の記事にも掲載され、社説などもありますが、多胡さんのご指摘通り「今更、おまえらが言うな」という、関心なしの受け止めです。どういうことか。

    実は、米国の人のほとんどが、

    「株主を軽視し、従業員と顧客を最優先する企業が良い企業」

    と、既に気づいているというのです。株主至上主義の会社に碌な会社はない、と。

    Amazonのベゾスもあからさまに「株主を信用しない」と公言し、徹底的な顧客の煩わしさ・痛みの解消とexperienceを豊かにすることに全力を注いでいます。確かにAmazonの売上成長に対して、利益は少ないですし、確かマイクロソフトも長年、配当しませんでした。成長期待を示し、望む株主には投資機会を与えるだけです。米国社会は、変質しているかもしれません。

    「三方良し」は、残念ながら日本企業社会の多くでは、これまた経営者の「都合良い言葉」となっています。

    実は、三方どころか「経営者良し」だけです。ノルマ銀行に、「顧客良し」なんてあるんでしょうか。お目にかかったことがありません。

    米国は「株主を除く二方(顧客と従業員)良し」となっている可能性もあります。

    つまり、今回のラウンドテーブルは、既に『存在価値』として圧倒的な差をつけられたGAFA、ネットフリックスなどに対して、取り残されたオールドカンパニーたちが、「我々は今更だが、変わる」と、むなしく宣言したものかもしれません。

    さて、日本。大企業中心の経団連という組織がありますが、近年、経団連アレルギーが発生しているような。。。

    サブスクリプション(毎月課金)は、顧客に「なくてはならない」と、価値を認めてもらわねば成立しません。そして、それこそリレバンの真骨頂であり、目標であり、最高の報酬である可能性があります。増田さんのご指摘に大賛成です。

    「顧客と世の中の役に立たないもの」にサブスクは成立しません。顧客本位を「金融庁が言うから」と、ブツブツ言う時点で、何かが終わっています。

  3. 新田信行 より:

    本声明の背景については、アメリカ通の者から情報を仕入れて見たいです。また、今後の動きを注視したいですね。

    一方で、これが日本が良い方向に向かうきっかけになることを期待しています。もちろん地域金融業界にとっても…。