地域金融機関の SDGs には「共通一次」がある

SDGsの専門家の話を聞く機会がありました。

とくに、MDGs (ミレニアム開発目標、2001年策定) からSDGs への流れについての説明はわかりやすく、頭の整理ができました。

MDGsにおける金融に関わる目標は、「開放的で、ルールに基づく、予測可能でかつ差別的でない貿易と金融システムを構築」であり、開発途上国へのODAのようなところにフォーカスされていたと思います。したがって、地域金融機関での認知度は低かったのです。

ところが、経済成長の要素に厚みが加わった SDGs では「金融」が存在感を出してきます。

9月3日のブログ「SDGsを金融商品に置き換えて矮小化するな」でも書いたのですが、

昨年5月のESG金融懇談会(第5回)で、協同組織金融機関を代表してプレゼンテーションを行った京都信用金庫の増田理事長 (当時) の指摘は、地域金融機関にとってのSDGs の本質を示しています。

~SDGsは17の目標と169のターゲットで構成されている。「金融」と言う言葉は9つのターゲットで出ており、その過半は金融サービスへのアクセス改善・拡大である。最も ESG 金融を意識した内容は、8.10「国内の金融機関の能力を強化し、すべての人々の銀行取引、保険および金融サービス へのアクセス拡大を促進する」であり、これが ESG 金融ではないか。~ (環境省のホームページ、増田さんのプレゼン要旨より)

地域金融機関にとって、SDGs は「金融排除をするな‼️」だと思います。

さて、

環境省の「ESG地域金融の先行事例調査に関する検討会」の報告書「事例から学ぶESG地域金融のあり方 ーESG地域金融の普及に向けてー (2019年3月) は、地域金融機関として目を通しておくべきペーパーです。

https://www.env.go.jp/press/files/jp/111319.pdf

ワタシも公表された時に一読したのですが、そこで取り上げられた事例集に違和感を感じました。

繰り返しますが、地域金融機関にとって基本となるSDGs は「金融排除をするな」です。

ところが、事例集にある9つの金融機関の中には、地元の伝統産業等への融資や本業支援を疎かにし、隣県の大都市部へのビジネスに傾斜しているようなところもあります。

メッセージ性の強い個別の取り組みだけを見て、好事例としてあげることは地域金融機関のSDGs の本質を歪めることになりかねません。

まずは「地元における金融包摂の姿勢はどうか」という全国共通一次試験にパスしない限り、個別事例の段階に行くべきではありません。

なんちゃってSDGSと、本物のSDGs との違いは「金融排除か、金融包摂か」です。

このことを改めて強く主張します。


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コメント

  1. 八代恭一郎 より:

    一次試験の金融包摂も個別事例で説明されることが多いのではないでしょうか。

    数先のミドルリスク層で事業性評価を行い、資金繰り支援をして、業況が改善した的な・・・。

    なぜ金融包摂のKPIで説明しようとしないのか。例えば、要注意先以下の先数比率、正常先上位の先数比率などいくらでもありますし、すぐに計測できるはずです。隠しておきたい事情でもおありなのでしょう。クールでセクシーなSDG’sを提唱したある国の大臣は、KPIに裏付けられたカーボンオフセット不足のエネルギー政策をマスコミから批判されましたしね。

    地域金融機関の中には、要注意先数比率が50%にも及び、他行のミドルリスク層の定義に下位正常先が含まれることを知って驚くような、ガチンコの金融包摂をやっているところもあります。

  2. 橋本卓典 より:

    環境省の金融リテラシーの低さが露呈されていますね。小泉さんには是非奮起を期待。残念ながら、一昔前の金融庁を見ているようです。ミドルリスク先にどの程度入り込み、どの程度、改善に繫げたのか。金融排除先の金融包摂が、SDGsの「S」に他なりません。カンシンなどは、良いとして、あとは個別事例を取りあげても、結局、個別事例です(笑)地域全体をどう底上げするのでしょうか。

  3. 増田寿幸 より:

    橋本さんの言うようにカンシンのSは本物ですよね。ネパールの銀行との提携で在日のネパール人を支援するは素晴らしいです。

  4. 新田信行 より:

    ありがとうございます。GABVのアジア大会でのネパールのNMB銀行との調印式は、GABVのメンバー皆から祝福されました。SDGsは金融人としての誇りだけでなく、幸せの4因子にも繋がっていると感じました。