上意下達から心理的安全性へ

某金融機関において若手行員のリレーションシップバンキングでの顧客向け提案能力が格段と向上しています。

若手 (男女を問わず) が活き活きと行動する背景には、現場に徐々に浸透してきている「心理的安全性」があるようです。

この金融機関では、上意下達の企業風土にメスを入れるべく、トップが先頭に立ち、役員が手分けして現場を周り、車座集会を繰り返しています。

こういうコミュニケーションの積み重ねが、現場の心理的安全性を作り上げているのだと思います。上意下達から心理的安全性へ、これはトップならびに役員の絶え間ない努力が大前提となります。

ところで9月28日の本ブログ「自己中心の合併で大量の人材流出」で、弱者 (小規模の側) の方を中心に多くの早期退職が出ているケースと、皆無に近いケースとに二分化されると書きました。

前者に分類される某地域金融機関では、驚くことに経営陣と現場との間でのコミュニケーションがまったくなされていません。上意下達かつ説明不足の組織で、現場は疑心暗鬼で不安が沸点に到達しています。

一方、後者に属する某地域金融機関では経営トップが車座集会を何度も行なって、現場の質問に丁寧に答えています。千人を超える全員が対象だったそうでトップの負担は大きかったものと思いますが、地域金融機関の最も重要な資産がヒトである以上、最優先課題として取り組まねばならないことです。

ヒューマンアセットを活性化させるのも崩壊させるのもトップ次第。

現場に出ない、出ても顔を見せるだけ、お客様を訪問しない、訪問しても形式的挨拶だけ、こういう姿勢では心理的安全性への道は遠く、お客様との信頼関係を築くことはできません。

そういう人間はトップに就いてはいけないということですね。


シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. 東北の銀行員 より:

    以前、九州地方の地域銀行行員から頭取と普通にサシ飲みする話を聞いてカルチャーショックだったというコメントをしましたが、当時彼に頭取はどんな人なのか聞くと「普通に気さくな親父さんですよ」とのことでした。私にとってはサシ飲み自体が普通ではなかったのですが(笑)。

    あれから数年が経ち最近になってやっと、その頭取と行員の関係性も「心理的安全性」の一面であることに気付きました。

    同行は今でもブレのない顧客本位の本業支援を継続しており、その取組に益々磨きが掛かっているようですね。

  2. 増田寿幸 より:

    ダイアログ(対話)を模索して何冊もの本を読んでいたころに、「ダイアログの原義はインデアンの焚火集会」という記述に出会ったことがあります。夕食後に集落の老若男女が焚火の周りに集まり、当面の課題を相談するのですが、「上下の区分はまったくなく全員が平等に意見を言い、聞く」という状態が暖かい焚火を囲んで続き、対話が一段落したら、一番の長老がおもむろに感想をつぶやき、解散になるとの情景描写がありました。とても印象的な記述で、ダイアログが腹落ちした気分にありました。

  3. 新田信行 より:

    ロータリーでは、炉端会議がありますね。

    当組では、スマイルミーティングと呼んでいます。

  4. 橋本卓典 より:

    文化人類学出身者の洞察が鋭いのは、ヒト科ホモ属という「まっさらな目」で、社会を再解釈しているからだと思います。

    東北の銀行員さんのおっしゃるように、銀行頭取(という所詮ヒト科ホモ属の一人)と「サシ飲み」すること自体が、どういうわけか「畏れ多いこと」になってしまった信仰もあれば、行員から「気さくなオヤジ」として親しまれる頭取や「たき火集会だよ」「炉端会議だよ」という金融機関トップもいる。

    誰であれ、人が人として接することができない時点で、その「群れ」は、「危険組織」ではないでしょうか。