地銀RAFの本質は森論考にあり

日銀の金融高度化センターが今月、高松と仙台で行なったセミナー「ガバナンス改革の実践~リスクアペタイト・フレームワークと経営監査」の資料を見ました。

日銀のhpに掲載されている資料では「メガバンクと地域金融機関とでは RAF は異なる。」と明記されているのですが、ここに登場する地方銀行の RAF がメガバンクのそれと“本質的に”どこが違うのか、腹に落ちませんでした。

ワタシは、メガバンクと地域金融機関 (メガもどきの地銀は除きますよ、笑) は別業種だと思っていますが、だとすれば RAF の建て付けはまったく異なるはずです。

この疑問をスパッと解き明かしてくれるのが、

週刊金融財政事情 2019年3月25日号の森俊彦さんの論考「金融仲介機能と健全性の両立にはRAFが不可欠」。

地域金融機関で RAFに取り組む人間は“必読”です。

改めて森さんの論考を読み直すと、地方銀行がやっている RAF の問題点 (メガバンクのモノマネの域を出ない) が浮き彫りになります。

森さんの論考にある、

~RA (リスクアペタイト) の大方針: 銀行法第1条「国民経済(地域と置き換えてよい)の発展に資する」という前提のもとで、持続可能なビジネスモデルを確立し、持続可能な社会の実現に貢献、そのためにリレーションシップバンキングを普遍的ビジネスモデルとして確立すること。

~リレーションシップバンキングである以上はカネ (エコノミック キャピタル) だけでなく、ヒト (ヒューマン キャピタル) の要素も忘れてはならない。

この2点が、地域金融機関とメガバンクやメガもどきとの違いだと考えられますが、ワタシには冒頭の高度化セミナーに出てくる地方銀行の取り組みからそれを感じとることができません。

地域金融機関の RAF は、森論考にある RAの大方針のところから再構築する必要がありそうです。

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コメント

  1. 東北の銀行員 より:

    仰る通りです。

    以前にもコメントさせていただきましたが、地銀のRAFはメガバンクのそれを真似ても全く意味がありません。

    自行の経営理念に立ち返り、地域の為に何をするのか、その時に進んで受け入れるリスクは何か、各行独自のリスクアペタイトをまず検討する必要があります。

    RAFは「なんちゃって」では済みません。コーポレートガバナンス・コードのように横並び意識で形式的に導入するなど論外です。

    だったら寧ろ何もしない方が、まだ良いと思います。

  2. 山猿 より:

    RAF自体には決まった形は無いのでしょう。あくまでも自分達で行うワークから導かれるものだし、アペタイトという時点で『本気でそこにコミットする』という、地域柄や行員の資質に基づいた前向きな覚悟(理念)が絶対的に必要。更にそのためにチェンジマネジメントも必要だし、そこに到達するために得なければならないスキルや外部リソースとの連携なども自然と想起されてくるはずです。
    そんな覚悟がない『なんちゃって』を進めたとしても、途中で必要となるリスク管理の高度化やガバナンス強化策などは経営陣にとって苦痛でしかなくなりますよ。

    結局そんな事は企画の連中に丸投げ・・・、目に浮かびます。

  3. 橋本卓典 より:

    森さんのおっしゃる「地域に資する」と「ヒューマンアセット」は、これまでの金融庁に欠けていた視点ですね。早期警戒制度ではようやく盛り込まれたようですが。

    私が今、思うのは、やはり「上場と配当」の問題です。
    昭和ではなく令和なので「上場していないと知名度が上がらないから採用できないんだよ」というのはやめましょう。ならば配当する必要はないはずです。

    地域金融機関の場合、当たり前ですが株主に地域からいただいた資源(資本)を分配することになります。持続可能な経営が問われている時、その意味は一体何なのか。ともすると信用不安を起こさないための対応ではないのか、ということです。

    思うに地域金融機関(だけではないと思いますが)の場合は、トップ次第でいかようにも経営が変わります。なぜか。それは役職だけでなく、トップのネットワークが変わるからです。場合によっては、これまで築いた良質なネットワークを遮断したり、ハブ機能を疎外、疎遠することで、危機を知らせる良質な情報をも遮断してしまい、情報を甘く見積もり、対応が後手に回ってしまうのです。いかに堅牢な助言や監視の機能を備えた城郭(組織構造)を築いても、それを運営する人のネットワークが劣化すると、砂上の楼閣となります。

    思うに金融庁が昨年始めた地域生産性向上支援チーム、地域課題解決支援チームというのは、こうした金融機関以外とのネットワークとつながることで、地域金融にも影響を与えていこうというネットワーク思考のアプローチとも解釈できます。