中小企業の再チャレンジを後押しする引当の考え方

本年9月に発表されたディスカッションペーパー「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」(案) の「<BOX4> 正常な運転資金と引当の見積り」の箇所 (37ページ) には、苦境に陥った企業を再生する上で、非常に重要なポイントが記載されています。

~ 債権の回収可能性を引当に反映するという観点からは、破綻懸念先債権の引当の見積りにあたっても、担保・保証による回収見込額のみならず、資金繰り等を継続的にモニタリングすることを前提として、正常な運転資金と認められる貸出金のうち回収の確実性が合理的で裏付け可能なものをも勘案して引当を見積もることが考えられる。(本文)~

企業再生の現場では、たとえバランスシートが債務超過となっていても、将来キャッシュフローを生み出す事業、商品サービス、受注工事などがあれば、それを選別し、そこから収益を積み上げてバランスシートを改善していきます。

これらに見合う運転資金を切り離して、ストックに対応する借入金と異なる引当の見積もりを行うことは当然のことと考えられます。

しかるに「破綻懸念先には正常運転資金はない」との杓子定規な思い込みに支配されているレイジーな地域金融機関が多いのには情けなくなります。

これでは再生できる会社も陽の目を見ることはありません。

新しい資産査定、引当の考え方により、地域金融機関が意識を改め、より多くの中小小規模企業の再チャレンジ精神に火がつくことを期待します。

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コメント

  1. 長川康一 より:

     28日のRAFのお話、そして今日の再チャレンジを後押しする引当の考え方を読み、地域金融機関には今、真にファイナンス思考が求められていると感じました。
     ところが現実には、検査マニュアルの査定・引当をそのまま利用していきたいという地域金融機関が多いように感じています。今までと同じように中小企業と向き合っていきますよという姿勢が読み取れ、地域金融機関の存在価値はますます薄くなっていくとしか思えません。
     中小企業の再生支援は生半可なものではなく特に時間を要するものでまた信頼関係の維持が必要です。これまでの査定・引当基準の踏襲では継続的対応が難しいと思います。何せ今まで出来てきていないのですから。
     私は信用組合の人間ですが、組合員のための信用組合の使命を考えると、検査マニュアルに重点を置いた仕事から組合員・お客様に重点を置いた仕事に切り替える今回がチャンスと思います。そのためにも結果実績重視から企業の将来価値を踏まえた支援に取組む態勢づくりをしていかなけらばなりません。特に職員のファイナンス思考育成が重要と考えます。