センスを疑う

昨日12日の札幌市内における金融庁長官の北海道内の地域金融機関のトップに対する業務説明会の様子が、本日の日経新聞北海道版に掲載されています。

遠藤長官の、

~ 金融機関に求められている役割として取引先や人材の紹介など融資以外のサービス需要が多く、こうした需要に長い目で応じれば融資につながる、

~ 金融機関に求められているのは課題を特定し何ができるか、企業と一緒に考えることだ、

~ そして、顧客本位で持続可能なビジネスモデルを作ってほしい、

との至極ごもっともな説明に対し、参加者 (地域金融機関トップらしい) から、

「短期で安定的な収益もあげなければならない」

との声があがったことには、愕然としました。

いまどき優越的地位をちらつかせない限り、「短期で安定的な収益」などありません。こういうことを臆面もなく長官に対して言うトップは、自ら顧客本位の業務運営の撤廃を求めていることが分かっているのでしょうか。

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コメント

  1. 高見守久 より:

    このような経営トップは、2000年代の金融庁検査を要領よくスルーした方でしょう。金融検査マニュアル廃止云々と言われますが、資産査定管理部門で長らく担当していた者にとっては、金融検査マニュアルや監督指針の基本的なところは理解しています。よって、金融検査マニュアルの骨格部分は、新しいディスカッションペーパーとなったとしても残るだろうと考えますし、残さなければなりません。これからは、金融庁長官も各地で説明会されるのは良いとしても、それよりも金融庁審議官以上の方々が各金融機関の経営トップと対話して、明確に指摘するなりして、ダメな経営トップは自ら辞めるよう引導を渡したほうが効果が上がるかもしれません。

  2. 橋本卓典 より:

    思うに、現場へ「顧客本位と収益最大化の両立」を丸投げするトップは何かを勘違いしているのではないでしょうか。淀みなく、迷いなく、現場はやりたいこと、大切なことを目指し、まっしぐらに走るのが自然で、収益を含めたビジネスモデルを考案するのは、現場ではなく、経営の責任のはず。将来の銀行員は、非経済的な「まちづくり」などのプロジェクトに勤しんでいるのが理想です。それを成り立たせる収益システムを考え出すのが経営です。

    誠に喩えはよくありませんが、国防なり戦闘に向かう現場の方々に「後々の和平時期や和平条件もよく考えて行動するように」と支離滅裂な指示を出すようなものです。

    お客様との接点を増やしたり、お客様との関係性が長期継続深掘りになるようなビジネスモデルを金融庁は求めている訳で、「短期利益追求(つまりは、顧客本位の否定)」を公言するなど、かんぽ生命の再来です。脅威に他なりません。この脅威にこそ、業務改善指導なり早期警戒すべきなのです。「無理」なのではなく、知恵や知性が悲惨なほどに足りていないのです。

  3. 東北の銀行員 より:

    顧客本位や本業支援が将来的に収益に繋がるのは分かっているがウチは今の収益を稼がなくてはならない。」
    普通によく聞く(私だけかも知れませんが)セリフです。

    遠藤長官は局長時代の数年前から一貫して当たり前のことを言い続けています。先月もインタビューで「顧客と中長期的な信頼関係を結ぶビジネスを真剣に考えれば利ざやなどの資金利益は確保できる」と強調しております。
    なぜ長官が当たり前のことを敢えて言い続けるのか、一度良く考えてみる必要があるのではないでしょうか。

    顧客本位が建前で本音は目先の収益なんて、半端が1番良くありません。どうせなら「ウチは自行の収益を追求します」と公言して徹底的に営業推進をした方がまだ清々しいです。

    但しそれが市場にどれだけ需要があるのか、全くの未知数ですが(笑)。