地銀RAFとDPへの抵抗勢力

先日、地域銀行X の経営陣とリスク・アペタイト・フレームワーク(RAF) に関する議論を行いました。

RAFというのは、金融機関が自らの経営理念に基づき策定した経営戦略の実現のため、リスクテイクできる範囲内で、リスク・アペタイト(経営計画達成のために許容するリスクの種類と総量)を決定するプロセス、およびそれを支える内部統制システムから構成される組織的な経営管理の枠組みです。

RAFの目的は収益力強化とリスク管理高度化の両立にあり、収益最大化のための資本配布がポイントになります。

すでに地方銀行でRAFを導入しているところはありますが、ホームページ等で内容を見る限り、メガバンクのそれと大きな差がなく、とくに地銀特有の経済合理性だけでは計測できない信用リスクのところに甘さがあり、ワタシには納得できるものではありません。

多くの地域金融機関はリレーションシップバンキングを標榜していますが、リレバンにおける信用リスクテイクは経済合理性と社会性のバランスのもとで行われねばなりません。

地域金融機関の目指すべきRAFのモデルは、もと日本銀行のバーゼル委員会代表で現在は金融庁参与である、森俊彦さんの論文「金融仲介機能と健全性の両立にはRAFの導入が不可欠」(2019年3月25日、週刊金融財政事情) の中に明確に記載されています。

地域銀行Xにおいて検討されているRAFは、森論文に記載されたモデルに酷似しており、これが動き出せば業界でも画期的なものになると期待しています。

ワタシの方からは、X銀行で検討中のRAFモデルに、12月18日に正式発表されたディスカッションペーパー「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」(DP) に基づく信用リスクの考え方を反映してはいかがか、と提案しました。

X銀行も同様の考えを持っているものの、壁にぶち当たっているとのこと。

監査法人です。

地域銀行X のみならず、多くの地域金融機関から、

「DP に合わせた資産査定/引当の導入が監査法人から強烈な抵抗にあっている」

との連絡が、ワタシのもとに入ってきています。

ある程度予想されたこととはいえ、解決に向けて早急に動く必要があるようです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. 東北の銀行員 より:

    地銀が実際にRAFを検討する際、残念ながら殆どの銀行はフレームワークの形式整備から始めるのではないでしょうか。そして既に導入されているメガバンクのそれを参考にすることも当然なのかも知れません。

    が、その場合意識しなくてはならないのは地銀とメガバンクでは当然に「積極的に取るリスク」と「断じて許容しないリスク」はそれぞれ違ったものになる筈で、ここで改めて自行の経営理念をもう一度繙く(本来ここがRAFの出発点です)必要があります。

    監査法人の問題(?)については商業銀行の殆どが上場しソフトローであるCGコードをフルコンプライしている現状では難しそうですし、RAFの導入により経営理念に基づくリスクは敢えて取るということを株主にしっかりと説明し、納得いただくことも必要になります。

    そこで「上場廃止」も選択肢の1つだと私は考えるのですが、やはりこれはトンデモ案なのでしょうか(笑)。