ファースト・コール・バンクには但し書き

再生屋シンポジウム、主催者サイドの某氏から1月3日のブログ「2020年、主役は再生屋」に鋭いコメントが入ってきました。

リレーションシップキャピタルが毀損 (信頼関係の崩壊) してしまった地域金融機関では、再生屋たちの出番がステージの高い局面となるため、ドラスティックな外科手術ぐらいしか選択肢がない、との至極ごもっともなご意見です。

人間の身体と同じで、経営改善支援や事業再生は傷が浅いうちに治療に入るのが鉄則なのですが、信頼関係がない状態では、顧客が事業に不安を感じたときに金融機関のドアをたたくことはありません。

某氏の意見は、再生屋軍団を装備するとともに、いやそれ以前に、

「現場で日々顧客と接点を持っている人間が、顧客との間で何か困ったときに相談してくれるような関係を作ること。とにかく『普段の付き合い、不断の付き合い』です。」

おっしゃる通りです。

ファースト・コール・バンクを旗印に立てている地域金融機関は多いのですが、プロダクトアウト病に侵された現場は、「金融商品サービスが欲しくなったときに最初に連絡してもらえる金融機関になる」と曲解しているように感じます。(本部や経営陣も確信犯的にそう思っているかもしれない)

こういう金融機関は、中小小規模事業者が業況悪化や先行き不安でコールしたとしても、尻尾を巻いて逃げることは十分予想されるので、彼らの相談相手として認められることはないでしょう。相談したことで融資の返済を求められたら、それこそ“やぶ蛇”です。

ファースト・コール・バンクの文字の横に、「金融商品サービスのご購入に限ります」との但し書きをした方が良いですね。

大事なお客様に誤解を与えないためにも。

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コメント

  1. 田舎者の信金マン より:

    外科手術となる前に、相談いただける関係性こそ大切であると痛感します。
    「普段の付き合い、不断の付き合い」そうなれるよう、人間として修行、信金マンとしての修行を重ねて行きたいと考えています。

    普段の付き合いでは、社長の皆様に人生相談を聴いていただき、ヒントをいただく身です。精進して参ります。

  2. qzs04203 より:

    田舎の信金マンさんの地元では、
    トップ地銀が歯が立たないとうかがっています。

    いつでも相談できる関係を作れるのは、我が町の協同組織金融機関。
    お客様のため、地域のために今年も頑張ってください。

  3. 田舎者の信金マン より:

    コメントいただき、ありがとうございます。地銀の背中に追いつけ、追い越せを地道に歩んだ泥臭い諸先輩のおかげと、地域の皆様のおかげによるものです。
    金融機関はストック商売であり、そのストックには目に見えない信頼資本(ヒューマンアセット含む)がとてつもなく大切だと感じています。特に金融機関は預貸金等、数値で見えるものに頼ってきました。それも大切な指標ですが、同じく信頼資本も大切と考えています。数値で表しずらいものこそ高度で、伝える事が難しく、評価しずらいと思いのだと感じています。
    泥臭い先輩方が築いた信頼資本の再構築が課題です。
    どうしたら信頼資本の容積を増やす活動ができるかを模索しております。もっともっと体も頭も汗をかいて行かなければなりません。

  4. 増田寿幸 より:

    「数値で表しずらいものこそ高度で、伝える事が難しく、評価しずらいと思いのだと感じています」という問題意識に賛成です。「伝える方法」や「評価する方法」を考え出すことが地域金融機関経営にとって喫緊の課題だと思います。私の感覚では「伝える方法」は「価値への共感」がポイントと考えます。そこを利用して評価できないかと模索しています。

  5. 橋本卓典 より:

    田舎の信金マンさんの「どうしたら信頼資本の容積を増やす活動ができるか」ですが、「信頼資本の容積を増やす」ためには、お客様に認めていただける「お役立ち」以外にはないだろうと思われます。「どう活動するか」ですが、それは様々なやり方があろうかと思いますが、「集合知」が模索するに値する一つのテーマかと思います。「集合知」は組織内外の知性を拾い集めることです。組織内の知性を拾い集めるには、心理的安全が不可欠です。組織外の知性を拾い集めるには、ネットワークが不可欠です。