リスクテイク、現場に温度差

「『ミドルリスクに取り組め、リスクを取れ』と経営から指示を出しても、支店によって温度差がある。この温度差がなかなか縮まらない。」

昨日のある金融機関での議論です。

答えは、金融庁参与 森俊彦さんの論考、週刊金融財政事情 2019年3月25日号「金融仲介機能と健全性の両立にはRAFが不可欠」の中にあります。

~ RAFは、経営理念の下で策定される経営計画を実現するためのリスク•アペタイト (進んで引き受けようとするリスクの種類と量) を明確化し経営管理を行っていくためのリスク・ガバナンス (コーポレート・ガバナンスの枠組みの一部) の中核である。経営理念にはじまる経営計画の基本事項、運営体制やリスク・アペタイト方針をリスク・アペタイト・ステートメントとして文書化する。これと平仄のとれた形で、具体的な経営計画(事業戦略、財務計画、リスク・アペタイト[キャピタル・アロケーション])を策定し、経営会議・取締役会において一体的に審議・決議する。(同論考より抜粋)

リスクに対する経営としての議論がなされおらず、伝えるべきことが現場に伝達されていないことに尽きると思います。

経営や本部の怠慢によるものと考えます。猛省。

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コメント

  1. 増田寿幸 より:

     「経営の怠慢」とされる結論には同意します。ただ、その金融機関で、ミドルリスクを取りたがらない支店長は「銀行の宝物」だと思います。なぜなら経営がリスクアペタイザー(リスクを取って得られる果実)をまともに示せないなら、「リスクを取れという単純な指図には従えません」というのは誠に健全な反応だからです。こういう硬骨漢こそが一流人材でしよう。上の指示に無前提に考えもなしに従うような支店長は阿呆な三流人材です。
     さて、問題は、硬骨漢たちに示すべきリスクアペタイザーです。間違っても「比較的に厚めの貸出金利収入」などではありません。そんなものは百戦錬磨の支店長たちには魅力ではありません。貸出利息なら自らの魅力で安全貸出先を多く集めて確保できるからです。ではROAでしょうか? これも効きません。元本回収後のROAは予測実感できませんから。
     やはり最高のアペタイザーは「取引先の成長」だと私は思います。ミドルリスクをうまく取れば「この会社を自分は育てた」という実感、仕事のやりがいが得られるからです。ここからが私の持論。だとすれば、それらをどのようにアペタイザーとして金融機関内で配布するのか? はい、いつもの「仕事充実感エピソード」の共有でありまする。このエピソード群は当然にミドルリスク先での出来事に集中いたします。つまりアペタイザーとして機能すると思います。

  2. 橋本卓典 より:

    「笛吹けど踊らず」

    なぜ、踊らないのか。なぜ踊らせることができないのか。なぜ、踊るのか。なぜ踊らせることができるのか。実に興味深い考察です。

    カーネマン的には「利益獲得よりも損失回避のために行動を起こしやすい」ということですが、他方、京都信金のような「大聖堂プロジェクトに関わる充実感を抱くレンガ積み職人」というモチベーションもあります。

    カーネマン的には「一生は短い。働く期間はもっと短い。今年も既に12分の1が経過してしまいました。お取引先の成長を応援して喜んでいただくという絶好のおもろい体験をせずに、あなたたちは退職していくのですか?」という訴えかけとなりましょうか。

    京都信金的には、増田さんのおっしゃる通りです。

    どちらのアプローチが有効なのか。硬骨漢支店長もいれば、単なる保身と社内政治の支店長もおりましょう。相転移を起こすものは果たしてなんぞや。興味は尽きません。

    いずれにしても「経営の怠慢」には賛同です(笑)