待ったなし

世界的な株式相場の大暴落と急激な円高、リート市場も大崩れ。

各地域金融機関の預かり資産業務に携わる人たちは顧客説明に忙殺されているものと思われます。

「預かり資産業務は儲からないと薄々感じていたが、相場のアゲインスト局面での顧客フォローに関わる時間とコストを勘案すれば、この業務を収益の柱としてとらえることは間違いと痛感した。」

このような地域金融機関からの悲痛の声に、まったく異論はありません。

顧客の資産形成の支援は地域金融機関にとって避けては通れないものですが、ノーロードと積立が主流となる中で、この仕事は儲からなくてもやらなければならない業務と位置づけるべきです。

この10数年、地域金融機関の多くは、この預かり資産業務と住宅ローン/賃貸アパートローンに傾斜したことで、事業性融資の現場力は壊滅的になっています。由々しき問題です。

さて、

地域金融機関の新型コロナに関する顧客支援策が次々と発信されていますが、中小小規模事業者との取引を熟知したプロの現場職員 (いまや数が少なくなっています) が口を揃えて言うのは、

~ 支援策は明白である。ポイントは金利を下げることではなく、元本のところ(約定弁済額)、ここを緩和すること。ゼロ金利にする魅力は小さく、据え置き期間を延ばす方がはるかに効果がある。

~据え置き延長は時間稼ぎ。据置き期間のうちに金融機関、信用保証協会、中小企業支援団体、さらには地方公共団体が一致団結して、事業者の本業をサポートしていく。

~ カネをつけるだけでは事業者にとって借金が増えるだけ。事業者はそれを好まない。廃業に拍車がかかりかねない。

ところが、

答えは出ているのに、現場力が落ちた多くの地域金融機関にはこれができない。

リレバンをおろそかにしたことのツケは大きいと言わざるを得ません。

現場力が落ちて、収益力も含み益も激減 (→ リスクテイクから逃げる) した地域金融機関は、政府系金融機関に押し付けるしかない。そして日本政策金融公庫はパンク状態。

これが実情ではないでしょうか。

地域金融機関の体力低下については、金融機能強化法による公的資金注入という対応策があるのですが、崩壊した現場の立て直しは容易ではありません。

OBも含め、事業者取引ができる職員を総動員し、対処するしかないでしょう。預かり資産業務や住宅ローン/賃貸アパートローンの経験しかない多くの職員はOJTで食らいついていくことです。

待ったなしです。

ここで逃げたら地域金融機関の存在価値はありません。

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コメント

  1. 長野の銀行員 より:

    今振り返ると、リーマンの時に必死で食らいついてきた数名の人材は今、営業店で重要な人材となっており、現場の最前線で事業者のために采配を振っています。
    彼等を見ていると非常に頼もしいです。
    同時に間違っていなかったとも感じております。

    もう答えは既に出ています。
    アホなノルマの議論は吹っ飛びました(笑)
    預かり資産、アパマンローンを覚える前にやる事が理解出来たのではないでしょうか?

  2. 田舎者の信金マン より:

    https://www.city.iida.lg.jp/uploaded/attachment/43576.pdf
    長野県飯田市
    この取り組みに敬意。

  3. 田舎の信金マン2 より:

     地方の信用金庫で預かり資産を担当しています。当金庫の理事長の方針により、真にお客様のためになる、喜んでいただける提案をするべく私達なりに努力しています。
     「儲からないけれどやらなければいけない業務」であっても、意義のある事でありそこで働く職員には誇りをもってやりがいのある仕事をして、お客様に笑顔になっていただきたいと思っています。
     この様な議論から各々の立場の優劣を決めて、お互いの職務を尊重し合えない状況になることを非常に懸念しています。