戦時の経営体制を

地域金融機関の現場におけるコロナウイルスの資金繰り対応の話を聞いていて、完全なる二極化現象が起きていると思います。

「相談に来るお客さんは多くはない」といった言葉が平然と出てくる受け身の地域金融機関と、各取引先を個別訪問して資金繰りに応じるとともに今後の事業展開の相談に乗っている地域金融機関には天地のごとき差を痛烈に感じます。

前者はコロナ対応の資金に応じるのは、日本政策金融公庫、信用保証協会、地方公共団体だと思っているフシがあります。とんでもない思い違いです。

有価証券運用ポートフォリオが壊滅しているからそれどころではないとの本音も見えます。東日本大震災の折に「我々も被害者である」と発言した地域金融機関の経営者もいたように記憶していますが、その発想と似たものを感じます。

この期に及んで前者のような金融機関が存在する (マジョリティである) のは、経営トップの問題です。

どこの地域金融機関においても、真の意味で顧客のことを考え、見識と経験と責任感のある、まともな幹部は一人や二人はいるはずです。主流派ではないでしょうが。

そういう人間をトップに据えて臨戦体制でやる段階です、いまは。

幕末期の備中松山藩の山田方谷 (ほうこく) は百姓から藩の執政に登用されました。越後長岡藩は門閥家老を横に追いやり河井継之介を家老に抜擢します。司馬遼太郎さんの長編小説「峠」を思い出します。

金融行政サイドは、こういう視点で各金融機関と深度ある対話をするタイミングだと思います。いまは戦時です。

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コメント

  1. 橋本卓典 より:

    公庫は1ヶ月待ちどころではないようで、かなり苛立っている事業者もいらっしゃるようです。事業者さんでもいろいろな状況なの方がいます。目先待ったなしの方から、先々の方までいらっしゃいます。それよりは気になるのは民間金融機関の淡泊さ。窓口は設けたものの「特に相談にはいらっしゃいませんね」「短期資金は対応難しい(面倒くさい)ですね」という冷めた感じ。今に始まったことではないですが、こうした「他人事金融ウイルス」は関節を固まらせ、筋肉を衰えさせ、いざという時に足腰たたなくしてしまいます。ウイルスは、仕舞いには大震災の時に「私どもも被害者なんです」とトップ自ら当事者責任を放棄するかのような開き直りの症状さえも引き起こします。平時に動けない金融機関が有事に運動できる訳がありません。新型コロナで気になるのは、地域金融機関の熱量のなさ加減と運動不足の甚だしさです。窓口つくって、ボーッとしてないで、自ら外出されて、話を聞いてまわられたらいかがですか?不要不急じゃあるまいし。

  2. 高見守久 より:

    私が在職していた信用金庫においても、待ちの姿勢です。私が経営者なら、全営業店の店次長に融資有無関係なしに取引先の企業や個人事業者に出向いて状況をつぶさに調査するよう指示します。年度末は自己査定および償却・引当の期末修正の時期に重なりますが、絶好の機会でもあり、業況が厳しい先については債務者区分をランクダウンしてでも引当を積んでおけば、心おきなく融資先を十分サポートすべきです。リーマンショック時での轍を踏まないよう、金融機関は真の信頼回復を目指すべきです。

  3. 高見守久 より:

    金融庁は本日夕刻に、「新型コロナウィルス感染症を踏まえた金融機関の対応事例」を公表されました。内容を拝見すると、中小企業金融円滑化法施行中に行っていたものと同様な気がします。金融機関は、取引先の決算期ごとに信用格付や、12月末仮基準日および3月末基準日には自己査定および償却・引当を行っています。昨年12月に金融検査マニュアルを廃止されたとしても、金融検査マニュアル本編や金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕も踏襲されておられるものと思います。よって、金融機関は取引先企業の状況はある程度の実態把握されており、定期的に訪問されているならば今の苦境は肌に感じるはずです。金融機関行職員は事業性評価に係る銀行業務検定試験なども受験しているはずで、今こそ「事業性評価に基づく融資」を実体験できるはずです。私が信金に在職していた2000~2010年代は厳しい金融検査を資産査定管理部門で体験しその後取引先企業の経営再建や事業再生も取組みました。今、新型コロナウィルス感染症による厳しい環境は分かっていますが、自ら積極的に取引先企業に向かい合うのも今後の金融パーソン生活に大いにプラスになります。若気の至り、大いに結構。頭の固い経営陣にはここで退くきっかけとしていただきたい。