おカネのホームドクターも身を削るべきではないか

コロナウイルスで瀕死の状況に陥った中小零細事業者にとって、4月4日の日本経済新聞/第1面記事「政府、資金難中小に給付金 地銀が無利子融資」は、“砂漠に水”であることは間違いありません。

~全国の地方銀行や信用金庫を通じた中小企業向けの無利子・無担保融資も始める。いずれも前例のない政策で、中小企業の資金繰りを支える。3日に開いた未来投資会議(議長・安倍晋三首相)で明らかにした。ー(中略)ー 地銀や信金、信用組合を通じた融資は都道府県の制度融資のしくみを活用する。通常は中小企業が低金利で借りられる制度だが、政府が利子分を補填することで最大5年の返済猶予期間を設けて無利子・無担保で貸せるようにする。(同記事より)

地方公共団体の制度融資の活用とのことで、日本政策金融公庫の代理貸付 (ワタシはこの方式を提言していました) にはならなかったものの、“広くあまねく門戸を開いて ”同公庫の危機対応融資と同様の対応をすることは大きな前進です。

ただ、

すべての医療関係者 (ドクターたち) が自らも罹患するリスクの中で休みもなく身を削って戦っている一方で、そもそも「地域顧客のホームドクター」たる地域金融機関は身を削る覚悟で、生きるか死ぬかの状況にある地元企業に向かい合っているでしょうか。

残念ながら、リレバンに取り組んでいる (その中には地域顧客のホームドクターを標榜するところも) と豪語する地域金融機関の中には、今回のようなノーリスク商品でなければ取り組もうとしないところも少なくありません。

このような事例を聞くと腹立たしさを抑えることができません。

トリプル安で有価証券ポートフォリオが壊滅的になってそれどころではない、資本の毀損が恐ろしくて信用リスクが取れない、それで地元事業者の緊急コロナ対応に腰が引けるというのでは本末転倒です。

3月29日の日本経済新聞では“バーゼル3”の延期の記事が出ています。

~現在の自己資本比率規制は4.5%の最低基準と2.5%の上乗せ分をセットで達成することを求めているが、上乗せ分は柔軟な取り崩しを認める。もともと上乗せ分は平時に積み増して景気後退時に取り崩すことを想定したもので、「まさに現在にあてはまる仕組み」(日本の金融庁幹部)との判断だ。規制の弾力的な運用で自己資本比率の低下を懸念して貸し渋りに走るのを防ぐ。(同記事)

地域金融機関のほとんどは国内基準であるものの、この記事にある「平時に積み増して景気後退時に取り崩す」ことに変わりはないはずです。

「赤字決算を恐れず親身に緊急コロナ対応を行う地域金融機関」と、「資本の取り崩しを恐れてコロナ対応から逃げる地域金融機関」との違いを、地域のお客さまはしっかりと認識していることでしょう。(現在進行形)

口先だけのホームドクター、さっさと看板を下ろしたらどうですか。

(本稿は、本日掲載の“地域の魅力研究所のニュースレター”と同一のものです)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. 長野の銀行員 より:

    多分、「赤字決算を恐れず親身に緊急コロナ対応を行う地域金融機関」には、地域企業のために相当な覚悟を持って旗を振る経営者がいるのではないでしょうか。
    その姿勢は地域企業にとって何よりも心強く感じるものと思います。

    週単位、いや日単位で環境はさらに厳しさを増しています。今こそ地域金融機関/保証協会/コンサルタントの皆さん、ひとつになり乗り越えましょう!

  2. qzs04203 より:

    長野の銀行員さん、

    おっしゃる通り、経営者だと思います。

    地域金融機関の真価が問われるときに勝負に出ないトップは乱世には生き残れないでしょう。

    お客様はしっかり見ています。

    多胡