「顧客のため」というよりは「政策金融に取引先を奪われるから」

本日の日経新聞、渡辺淳記者の金融取材メモ「対等求めた地域金融」には、第二地方銀行と信用金庫の業界団体が、コロナ対応で政府系金融機関とのイコールフッティングを求めて、陳情して回ったことが書かれています。

~「政策金融の意義は理解している。それでも民間金融機関とのイコールフッティングを踏まえ、我々にも財政支援をお願いしたい」。第二地方銀行協会の幹部は不満を隠さず、競争条件をそろえるよう訴えてまわった。全国信用金庫協会も信用保証協会に支払う保証料の減免や地域によって異なる制度融資の一本化を要望。無利子・無担保融資の担い手となるべく自民党の金融調査会などに働き掛けた。(同記事)

「危機対応融資は公的金融に限定するのではなく、広くあまねく門戸を開いて、顧客の緊急事態に応じるべきである」という意見を2年前の“商工中金の在り方検討会”で主張したワタシとしては、第二地銀や信用金庫の業界団体のこのような動きは当然のことと思っていました。

ところがその理由が、

~根底にあるのは「政策金融に取引先を奪われたくない」(第二地銀協幹部)という危機感だ。(同記事)

興醒めです。「顧客のために」という理由ではないのです。

そもそも顧客の緊迫した状況にもかかわらず、「危機対応資金は公的金融の役割」と距離を置いている地域金融機関の何と多いこと多いこと。

日頃の取引があり、決済口座を持ち、顧客の事業実態を熟知している (はずであるが) 民間金融機関が傍観者であって果たして良いのでしょうか。

第二地銀や信用金庫の中には、コロナウイルスの問題が発生した2月上旬の段階でプロパーで危機対応融資 (低金利、長期据置、無担保) を用意したところもありますし、日本政策金融公庫がパンク状態となるや素早くつなぎ融資を提供しているところもあります。

公的金融に頼るのではなく、地元の大切な顧客の存亡の時に自らが身を削っても立ち上がるという姿勢であるかぎり、顧客との信頼関係に基づいた日常の取引がある民間金融機関が「政策金融に取引先を奪われる」ことなどありえません。

「かねての要望を一部でも実現させた地域金融機関の責任はいよいよ重い。」(同記事)

顧客本位よりも政策金融に取引先を奪われたくないことを平然と理由にあげる第二地銀や信用金庫の業界団体には、渡辺記者のこのメッセージをしっかりと受け止めてもらいたいものです。

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コメント

  1. 八代恭一郎 より:

    さっすがぁ!トップ地銀の多い地銀協は志が戦時中でも高いようですな。
    弊社最新論考で右から左に金を動かすだけで給料をもらえると取引先からいわれていたのは地銀協加盟の某大手地銀からその日デリバティブを売りつけられたら取引先からの話です。
    まぁ20年ほど昔の話ですが。