地域銀行の株主総会が終わるとディスクロージャー誌が株主のもとに届き、ホームページにアップされます。
某地方銀行の昨年のディスクロージャー誌のリスク管理態勢のところを見ていて、統合リスク管理、信用リスク、市場リスク、流動性リスク、オペレーショナルリスクと続いたところで、
「肝心なリスクが抜けているな」とツッコミを入れようとしたら、それらしきものがありました。
「人的リスク」
ところが、よく読むと、
「人的リスクとは、役職員等の処遇、役職員等の健康及び職場の安全環境、差別行為に起因した賠償責任等により当行が損失を被るリスクをいいます。 」
「役職員等の処遇」とはありますが、早期退職者が増える、新卒中途を問わず採用ができない、このようなヒューマンアセットが崩壊するという、銀行が抱える目下の最大のリスクという認識とは思えません。言うまでもないことですが、早期退職や採用難の根底にあるのは処遇の問題にとどまりません。
別にこの銀行が特殊なわけではなく、どうもこれがスタンダードのようです。
翻って、
金融庁は「探究的対話」についての説明(下記)の中で「人的資源」に着目しています。
「銀行が自らの経営理念・経営戦略に照らし、どのような金融仲介機能を発揮しようとしているか等を踏まえ、将来の収益・費用の見通しが盛り込まれた経営計画等がその考え方と整合的になっているか、経営計画等を実行するために必要な人的資源が十分に確保・育成・活用されているか等について留意して検証する」
あと2ヶ月もすれば、今年のディスクロージャー誌が。
「人的リスク」がどのような書きぶりとなっているか、注視します。
コメント
「人的リスクとは、役職員等の処遇、役職員等の健康及び職場の安全環境、差別行為に起因した賠償責任等により当行が損失を被るリスクをいいます。 」
朝から吹き出しました(笑)
役職員の損失じゃなくて、銀行の収益とは(笑)終わってますね。お話になりません。コロナでさらに時代に取り残されます。
実際多くのディスクロージャー誌の「人的リスク」はどこかの雛形丸パクリのような表記です。
「人」をアセットとしてBS上の資産に例えることができればリスクの捉え方も少しは変わると思うのですが、まだまだ古い考え方の経営者が多いんでしょうね。
当組合のディスクロでも人的リスクについてまったく同じく記載されていました。
金検マニュアルのリスク等管理項目の中の「オペレーショナルリスク」の要素として「人的リスク」があり、そこで示されている定義文言です。
事業継続性の観点というより、労務問題により発生する金銭的リスクを捉えているようです。
どこの金融機関もディスクロの体裁を整えることを主眼に、金検マニュアル踏まえ記載しているのだと思います。
現状における「人的リスク」の観点は、地域金融機関の存在価値である支援機能を果たせる人的能力・人的厚み・行動力を維持・育成できているかで捉えられるべきと思います。
金検マニュアルの弊害がここにもあったようです。
試験・受験といった競争に慣れた日本人は、正解・合格点を取ることを目標・生きがいにします。金検マニュアルは金融機関職員のまさに教科書でした。
今金融機関は金検マニュアルという古い教科書を捨て、「公共の利益に立ち共存共栄できる地域づくり」の為にはどうしたらいいかを思考し多々仮説を立て取り組むことが求められていると思います。