🚩地域金融機関のポジティブ・インパクト・ファイナンス

昨今、ESG、SDGsの関連で「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」というワードの露出度が高くなっているようです。

環境省のホームページを見ると、

「適切なリスク・リターンを確保しつつ、環境・社会・経済にポジティブなインパクトをもたらすことを意図したインパクトファイナンスは、世界的な潮流となりつつあります。アフターコロナの新たな社会づくりにおいても、その軸となるサステナビリティの向上を支える大きな役割を担うと考えられます。」

と書かれており、ワタシなりに「ウイズコロナ・ポストコロナにおける社会の持続に役立つ金融」と解釈しました。

振り返ってみると、ポジティブ・インパクト・ファイナンスという言葉を新聞紙上で初めて発見したのは、1年半ほど前です。

~三井住友信託銀行は融資を通じ、社会的な課題の解決をめざす「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」を不二製油グループに実行する。27日付で融資契約を結んだ。人権に配慮した原料の調達や環境負荷を抑える企業活動を評価した。持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、国連環境計画の金融イニシアティブが昨年11月に金融機関向けの指針を公表。三井住友信託は指針に基づき、評価の枠組みを定めた。(2019年3月28日、日本経済新聞)

三井住友信託銀行のニュースレター(2019年3月28日)には、「国連環境計画・金融イニシアティブが定めたポジティブ・インパクト金融原則に即した世界初となる融資契約」と記載されています。

さらに「ポジティブ・インパクト金融~3メガ初」との標題で、日経電子版(9月29日)が「三井住友銀行がメガバンク初のポジティブ・インパクト・ファイナンスの取り扱いを始め、年1000億円程度の与信の提供を決定、そのために国際的な認証機関から第三者評価を取得した」と報じました。

さて、ワタシ自身、国連環境計画・金融イニシアティブの金融機関向け指針や、国際的な認証機関による第三者評価の詳細を理解していません。

ただ、地域金融機関のポジティブ・インパクト・ファイナンスは、冒頭の環境省のホームページの記載からも察するに、「コロナ禍での金融包摂、さらに地域事業者の存続と成長の支援」だと考えるのが妥当と考えます。

詳しく説明します。

地域金融機関の融資姿勢は二極化しています。①「悪くなったら貸付債権を回収」か、②「悪くなっても経営改善・事業再生の支援をする」かです。

「誰一人残さない」というSDGsの思想(開発目標8.10)に合致するのはいうまでもなく後者です。どんな事業者でも雇用や商流(仕入れ先、販売先など)があります。小規模事業者や個人事業主であれば生業(なりわい)そのものです。いずれにしても短絡的に倒産・廃業に追い込むことは断じてできません。

リスクリターンについていえば、

①前者は短期的にはリスクを減らし、リターンも確保できるかもしれませんが、このような融資姿勢は倒産・廃業の増加を招き、地域経済/地域社会を揺るがし、金融機関の収益基盤を崩壊に導きます。

②後者のような姿勢であれば、地域経済・地域社会の存続、さらには持続的な再成長も見込め、中長期的にリターンを確保することができます。

コロナ禍で鮮明になった地域金融機関にとってのポジティブ・インパクト・ファイナンスは、ズバリ「経営改善/事業再生の支援」ではないでしょうか。

経営改善/事業再生の支援を怠り、業況の悪くなった企業に対する貸付債権の回収に熱心な地域金融機関が、臆面もなくSGDs宣言をしているのを見ると嫌悪感すら感じます。恥を知れ。

———————-

追伸:8日に第三回ESG金融ハイレベルパネルが開催されます。

環境省主催のESG金融ハイレベルパネルが10月8日に行われます。 前回のハイレベルパネルは3月でしたが、コロナ禍でEからSへ...

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コメント

  1. 橋本卓典 より:

    ネガティブ・インパクト・ファイナンスという切り口もあるかもしれません(笑)それと、インパクトの強弱も大変気になります。記憶されるくらいのインパクトがないと運動を巻き起こせません。positiveに記憶されるとはどういうことなのか。考えてみます。

  2. 東北の銀行員 より:

    当方では先日、年商約7千万円の企業にコロナ融資4千万円を実行しました。
    企業規模から言えば非常に大きな借入ですが今後の時間軸を考慮するとどうしても必要な資金であり、保証協会には当店が現在行っている本業支援など熱意を持って説明した結果、無事満額承諾いただきました。
    そしてこの融資を実行した直後ですが、当該協会支所長から「今回のコロナ融資が最後の金融支援とならないようにウチも同社の本業支援に協力したい」とありがたい申し出をいただき、現在保証協会も交えた協調体制で当社のコンサルティング支援に取り組んでおります。

    この企業が今回調達した資金と既存の借入金を返済する為には現在の倍以上の売上高が必要となり(それでも条件変更が前提となります)社長には私の持つ全てのリソースをフル活用して全力を尽くし支援する事を約束をしております。まだ戦略の策定段階ですが、この案件は必ず成功させたいと強く思っています。
    今回のコロナ融資自体は決して目的ではなく手段の一つに過ぎず、当該保証協会支所長もそこを良く理解されており非常に助かりました。

    詳細につきましては後日ヘンタイの会(と呼ぶのはまだ恥じらいがありますが)の方でご報告させていただきたいと思います。

  3. 諏訪信用金庫 奥山真司 より:

    うわぁ⤴︎
    皆さん、遂にミリオン!カウントダウンです!

  4. 寺岡弟分 より:

    私もずっとmillionのカウントしています