🚩有価証券運用による赤字決算、弁明の余地なし

十数年間の地域金融機関の社外役員の仕事をしていく中で、肝に命じていることがあります。

それは「身の丈に合致した有価証券運用」。

地域金融機関は地元事業者との取引で損失計上することについては正当性を主張できるものの(適正なプロセスに基づく地元融資に関わる不良債権は地元コミットメントの証)、地域外の大口融資の不良債権化や有価証券運用での失敗による赤字となると弁明の余地はありません。

地域外の大口融資での不良債権化の問題はバブル期に大きな痛手を負った体験が刷り込まれていて、地域金融機関の執行部門もさすがに注視しているのですが、有価証券運用となると実務経験が乏しいこともあり、そのリスクの捉え方には甘さが見えます。事務方からリスク管理報告は上がってくるものの、その意味するところが腹に落ちている経営陣は少数派です。

それでは「身の丈に合った有価証券運用」とはどういうものなのでしょうか。

強いストレスをかけた場合の予想損失額が期間収益の範囲内で収まること、これが地域金融機関の有価証券運用の鉄則だと思っています。ワタシの社外役員としてのチェックポイントは常にここです。

さて、

じもとホールディングス(20日発表)を除く、上場地域銀行の中間決算が出揃いました。

「最終赤字だったのは福島銀行と百十四銀行の2行。福島銀行は株式や債券の売却損を計上した。」(17日の日経朝刊)のようですが、有価証券運用が最終赤字の要因となるのは地域金融機関として猛省が求められます。

福島銀行といえば、2年半前に有価証券運用の含み損の処理と店舗等の減損処理により最終赤字を計上し、業務改善命令を受けて再出発したことが思い出されます。

~金融庁は6月2日までに福島銀行対して収益力の改善を求める業務改善命令を出した。同行は2018年3月期に将来発生する恐れのあるコストを前倒しで計上。31億円の最終赤字に転落した。今回は法令順守違反に対する行政処分ではなく財務に関する内容のため非公表。福島銀は検査を踏まえて、将来の損失の芽を早期に摘むための損失処理を実施。営業拠点としての収益力が下がっている店舗の資産としての価値を下げる減損処理などをした結果、7期ぶりに最終赤字となった。森川英治社長が引責辞任し、後任に同じ福島県の競合行である東邦銀行の元専務、加藤容啓氏を迎えて再建を目指す。~(2018年6月2日の日経記事「福島銀に業務改善命令、収益力向上求める 金融庁」の抜粋)

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2年半前に業務改善命令が発された段階で、有価証券運用については抜本的な見直しがなされているものと思っていましたが、この決算においても株式・債券の売却で赤字決算となったのは残念と言わざるを得ません。

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コメント

  1. 森脇ゆき より:

    お客様のアドバイザーである身としては、投資と同じく預貯金も「あなたのお金はここに行く」が明確であるほうが金融機関選別の際に好ましい材料です。
    「預金」はただお金を預ける行為ではなく「消費」と同じように個々の意思が入るべきもの。

    「投資」「預貯金」「消費」「寄付」(タンス預金も)お金の使い方の全ては生きざまを表すものと考えています。