🚩伴走支援で引当は変わる

23日の旅芸人ブログでも書きましたが、7月に公表された「金融仲介機能の発揮に向けたプログレスレポート」には、ウイズコロナ・ポストコロナにおける地域金融機関が取り組むべき中小小規模企業への支援項目が盛り込まれています。

この中で「人材マッチングの取り組み」や、事業者支援のための「知見共有」については、多くの金融機関において動きが見られるものの、「信用リスクについてのより的確な将来見積りに基づく引当」となるときわめて限られた地域金融機関しか対応しきれていないように感じます。

周知の通り、地域金融機関の多くはコロナ禍中で顧客に対する「伴走支援」を行うと明言しており、伴走支援を引当率に結びつけることは当然の流れと考えられるのですが、、、

さて、

伴走支援の土台にあるのは、信頼関係に裏付けられたリレーションと顧客事業の理解ですが、プログレスレポートの引当の項では、「顧客とのリレーション深度と顧客事業への理解度を引当へ反映する事例」が紹介されています。

 ~検討中ではあるが、個社ごとの信用リスクを、顧客とのリレーション深度と顧客事業への理解度をもとに引当に反映しようとする事例が見られた。 個社ごとの信用リスクを的確に引当に反映したいとするある地域金融機関は、財務格付に基づく倒産確率を、顧客とのリレーション深度と顧客事業への理解度に応じてノッチ調整した、調整後の倒産確率を用いることで、引当金を算定することを検討している。(同レポート、p32)

この事例は、ディスカッションペーパー「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」(2019年12月)にある「伴走支援によるグルーピングでの引当」に関連すると考えられます。

~新たに再生支援態勢を強化して、要注意先のうち一定のグループの貸出先を支援対象とした場合に、他の貸出先よりも当該対象先の経営改善が進みやすくなったケースでは、当該貸出先を切り出してグルーピングし、調整の要否を検討することが考えられる。その際、例えば、一定期間での当該グループと他の貸出の上方遷移率、下方遷移率を比較する等の方法により、当該支援態勢の実効性を評価し、その実効性の程度に応じて、引当率を調整することが考えられる。(ディスカッションペーパー、p25)

コロナ禍の地域金融機関にとって、2020年度下期、2021年度の最重要課題は、貸出先のランクダウン増を展望した「与信費用のコントロール」で...

ところで、

「地域金融機関の今回のコロナ対応の本業面での伴走型支援は【属人的】に行われている金融機関は10割、【組織的】となると1割に満たない」

一年ほど前に旅芸人プログで書きました。

本日の日経新聞記事「赤字覚悟で金を貸す」の中で、 ~多胡秀人は「合格点に達する地銀は1割に満たない」と話す。 という箇所があり...

この状況、いまも変わっていないと思います。

これでは「伴走支援によるグルーピング」を引当に反映させることは不可能です。

「伴走支援によるグルーピング」により信用リスクをミニマイズすることは地域金融機関の収益安定化のために意義があると思うのですが、これができないのはもったいないですね。

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コメント

  1. 橋本卓典 より:

    過去の返済能力から鑑みて、10年(なぜ10年かは誰も知らない・・・)で返済できなければ「正常先ではない」と念仏みたいにやってきた訳ですが、「人もみっちりと張り付けて、送り込んで、かみ込んで支援しているので、絶対に潰しませんよ」としている企業の引当が何で破綻懸念先になるのか。現実と乖離しまくっていますよね。金融危機で銀行もろとも不良債権で吹っ飛ぶようなフェーズなら、まだしも。今は、地域の持続可能性が問われていることから鑑みても、こういう新時代の信用リスク対応がなぜできないのかを検査した方が良いのではないですか?