🚩「機械的に反対」はレイジー機関投資家の証明

ある上場企業の社外取締役X氏の話です。

X氏は在任十数年ということで、株主総会の選任議案では多くの機関投資家株主から反対票を投じられています。

国内の機関投資家の多くは在任長期の社外取締役は「機械的に否認」というスタンスのようです。そんなことならAIにでもやってもらえばよい。

それに対し、議決権行使助言会社は、X氏賛成を推奨しています。理由は、

「在任長期の取締役がいたとしても、他の取締役の在任期間が長期でないのなら反対推奨はしない。就任期間が長い人間がいることも取締役のダイバーシティと考えられる。」

のように推察されます。

議決権行使助言会社の助言方法が形式的でないことがよくわかります。

次にあげる議決権行使助言会社の大手、ISS(米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ)の話もこのことを裏付けるものです。

~ISSが行った実質的な判断の例をあげたい。ISSが、自らの議決権行使助言方針を形式的に適用してはいない好例である。ISSは、取締役会の出席率が75%に満たない取締役の選任に原則として反対を推奨する助言方針を掲げているが、2016年6月、ソフトバンクグループの社外取締役である永守重信氏について、人物本位で評価して、出席率が55.6%であったにもかかわらず、永守氏の再任に賛成を推奨したのである。(2017/1/26、日経ビジネスオンライン、「ISSとグラスルイスの『新助言方針』とは 相談役制度や社外取締役の兼務制限はどう変わるか」より)

https://business.nikkei.com/atcl/skillup/15/275626/012000023/

ちなみに国内機関投資家が形式的対応での反対が多いのに対し、海外の機関投資家のほとんどすべてが議決権行使助言会社と同様、X氏の選任賛成だったとのこと。

レイジー病は本邦機関投資家にも蔓延しているようです。

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コメント

  1. 橋本卓典 より:

    在任期間の上限を設けるところは、S&P500でも少ないと思います。設けていても15年以上というのも珍しくありません。デュポンとかIBMとかも普通に非常に在任が長い人もいます。20年以上だっています。「も」います、というのはまさにダイバーシティです。当然、まだ日が浅い方もいます。つまり、いろいろな方がいるのです。杓子定規に在任期間を一律に設けるのは、安易な形式主義ですね。社外取がどのようなパフォーマンス、知見、視点をもたらすのか、実質にこだわるのが重要です。そして、特に重要なのことは、社外取に共通して最も求められる資質ですが「CEOに臆せずもの申すことができる」かどうかです。CEOには耳の痛い話を聞く度量も求められます。

  2. 北白川智 より:

    過日、とある講演会において、世界的な機関投資家であるブラックロックの対話方針を聴く機会がありました。
    曰く、
    ・長期投資家として企業との建設的な対話を重視
    ・例えば事業多角化は一般的にはディスカウント要素になり得るが、企業が将来の飯の種、成長につながるストーリーをきちんと説明できればよい
    ・毎年1400社と対話の機会を持っている

    表面的、機械的にマルバツを付けて仕事をした気になっている、勝手省エネ型の機関投資家とはまったく行動が異なっておりました。