今日、やっと秩父に行くことができました。40年ぶりです。
埼玉県秩父市といえば、セメント産業か、12月の火祭りを思い浮かべる方がほとんどと思いますが、私の場合には、地元デパート「矢尾百貨店」さんを見ることが、長年の懸案事項でした。
実は十年近く年前に近江商人を調べていたおりに、秩父にある「矢尾家」(造り酒屋、日用雑貨・生活必需品の販売など)と出会いました。
矢尾家のルーツは近江の日野。いまから260年余り前に秩父で創業しました。
蒲生氏郷(がもう うじさと=織田信長の娘婿、日野から松阪を経て、最後は会津若松藩主)の故地である日野は、五箇荘や八幡とならんで、近江商人を生んだ町として、よく知られています。
ですから、矢尾家は筋金入りの近江商人です。
さて、
秩父は明治になって、生糸で大いに栄えたものの、松方財政による極度のデフレから大不況となり、いわゆる秩父事件が起こります。
高利貸からの借金で首が回らなくなった農民らが高利貸や悪徳豪商を襲うという事件ですが、矢尾家は標的から外されたのでした。
理由は矢尾家が、長年にわたって、よそ者であるにもかかわらず、地域密着型の商売を粛々と行い、地域貢献を忘れなかったからです。近江商人の経営理念である、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の”三方よし”を実践していたからに他なりません。
現代の矢尾家の中核は、矢尾百貨店さんです。
各地に行きますと必ず地元デパートに入って見るのですが、そこには定型パターンがあります。
つまり「デパートはハレの日に行くところ!」というコンセプトをいまも色濃く残している地方デパートが多いのですが、矢尾百貨店さんの場合には、地元のお客さまの”日常生活”に目線を合わせているように感じました。
一階で広いスペースを占めているのは毎日の食料品や銘菓です。銘菓は全国ブランドだけではなく、地元のお菓子のコーナーも目立っていました。
まさに地域密着型百貨店らしさがあふれていました。
帰宅してから、矢尾百貨店さんのホームページを見ましたら、冒頭に”三方よし”のフレーズ。
近江商人、ここにありでした!