当時はあまり大きく取り上げられませんでしたが、15年前の金融庁での「リレーションシップバンキングの機能強化」の議論において、“公的金融”は大きな論点になっていました。
リレバンを進める上で公的金融の改革は必須であるというポイントです。
まずは信用保証制度です。
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「例えば、信用保証制度に関しては、
① 公的機関と民間金融機関の間でリスクの分担が行われることにより、モラルハザード防止、貸出審査能力の強化等が図られること、
② 諸外国においても部分保証制度が一般的に採用されていることから、
わが国においても今後、部分保証制度の導入に向けた検討を進めていくことが求められよう。」
(「リレーションシップバンキングの機能強化に向けて」、2003年3月27日)
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この提言を踏まえて信用保証制度は大きく見直されることになりました。
部分保証制度は導入され、いまや民間金融機関との責任共有が当然のこととなり、さらに中小企業の資金需要に一層きめ細かく対応し、信用保証協会と金融機関が連携して中小企業への経営支援を強化することで、中小企業の経営改善・生産性向上を一層進めることを目的に、4月1日より新しい制度がスタートします。
15年を経て、信用保証制度の問題点は改善されたと言えます。大きな進歩です。
一方、政府系金融機関についても、そのあるべき姿が明快に記載されています。
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「現在の経済状況のもとでは政策金融機関が果たすセーフティーネットとしての役割は非常に大きいと考えられるが、中長期的には政策金融機関の役割は限定的に考えられるべきであり、経済財政諮問会議においても、民間にできることは民間に任せることを原則に、政策金融機関の貸出残高の縮減の方向性が示されているところである。こうした中では、政策金融機関の直接融資は、環境・安全等公共性が高い分野や災害、金融機関の破綻等への対応などの分野に限定されてくると考えられ、 保証機能へ重点を移すとともに、直接融資を行う場合でも例えば企業再生等に際しての民間金融機関との協調融資といった手段に移行していくことが必要となろう。
仮に経済合理性の観点から離れた役割を政策金融機関が果たす必要があるとしても、それは最終的には国民負担によって賄われる性格のものであることから、その 業務運営に関し必要となるコストに関する情報は常に開示していく姿勢が期待される。」
(同上)
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遺憾ながら、信用保証制度に比べると、政府系金融機関の方は、その活動内容が変わったとはとても思えません。
それどころか商工中金のように、組織の存続のために税金を悪用し、不正行為を行うという惨状を露呈するに至りました。
2017年11月から2018年1月の商工中金のあり方検討会議においては、上記の文言に沿うように、民業補完の本来の姿が改めて示されました。
そして、商工中金だけにとどまらず、政府系金融機関全体のあり方を議論すべき、との方向性が打ち出されたのです。
委員「これまでの議論で現在の政策金融と民間金融が抱える課題が浮き彫りになったと思う。こうしたことへの対応は本検討会の範疇を超えるものであるが、環境が変化した中でそれぞれのあるべき姿を幅広く検討していく必要があるとの問題意識を持った。」(中小企業庁のHPより)
金融庁「今事務年度の金融行政方針に書いてあるとおり、公的金融の在り方、特に民間金融機関との協業の在り方について、今後どういう方向に進むべきなのか、関係者と議論していきたい。」(中小企業庁のHPより)
リレバンから15年。
先送りされた「政府系金融機関の本来のあり方」に関する議論が早急に始まることを強く期待します。