「事業性評価」が形骸化しています。
私は「事業性評価」という言葉が”上から目線”であまり好きではありません。
「事業理解」というのが適切かと思うのですが、それはさておき、多くの地域金融機関では、金融庁へのアリバイ作りの事業性評価が横行しています。
「顧客の事業実態を知り、強み弱みを理解した上で、過度な担保や保証に依存しない融資を行い、同時に販路拡大などの事業サポートを行うこと。業況が良くない先であれば経営改善の提案や、事業再生のために尽力すること。」
そのための第一歩が「事業性評価」です。
しかるに多くの金融機関の事業性評価は、事業性評価シート (SWOT分析などとコンサル屋が喜びそうな言葉が並んでいます) の作成が目的化しています。評価先は訪問しやすい企業がほとんどで、足が遠のいているミドルリスク層以下 (こういう層こそ事業理解が必要) は後回しなどというとんでもない話が聞こえてきます。
事業性評価シートに書かれている内容も「コピペだらけ」だと。
そんなことならやめてしまえと言いたくなります。
巷間伝えられるところでは全国の金融機関の融資に占める長期融資は9割超、うち設備資金見合いが半分程度と言われています。赤字補填の資金を除くと相当の額が運転資金。
本来は短期資金で対応すべきものであり、その中で事業の実態を見ていくというのが原理原則のはずなのに長期化のまま放置されています。
こういう異常事態の契機となったのは金融検査マニュアルですが、その検査マニュアルは3年前にすでに是正されています。
さらに言えば、金融検査マニュアルで短期継続融資が不良債権扱いにされ、貸倒引当金の対象となった時代にも、融資の原理原則を曲げず、長期資金へのシフトを行わなかった金融機関もあるのです。
もはや「金融検査マニュアルがあるから」という言い訳は通用しません。
事業理解のための羅針盤となる運転資金を長期漬けにしておいて、「事業性評価をやっている」と臆面もなく言うのは、厚顔無恥、支離滅裂、頭隠して尻隠さずです。
中小企業のために何をすべきかという原点に立てば、このような対応となるはずがありません。
こういう金融機関には、さっさと「お客様のために」という経営理念を取り下げていただきたいものです。
コメント
私の勤務先においても、事業性評価シートの作成の目標が
昨年から割り当てられています。訪問頻度や貸出推進の
目標もあり、きちんとした事業性評価シートを作らなければ
ならないとは思いながら、易きに流されざるを得ません。
ご指摘通りSWOT分析をやるのですが、規模の小さな事業者
等のWは価格競争力がなかったり、セールスマンがいなかったりと
いう弱みが相場であり、ご指摘通りコピペで済ませがちです。
他店のものを見ても、そのような対応をしています。
ただ事業性評価をやれといわれても、正直能力がないというのが
現実です。恥ずかしながら、金検マニュアルがあろうがなかろうが、
なるべく多くの取引先に訪問し、貸出実行などで実績を出すこと
ばかり求められてきたので、事業内容をじっくり見るなどは管理
債権化しない限りは深掘りしてきていません。
能力がないのだから質はどうでもいいので事業性評価シートを大量に
作れと今だに言われているかのようです。
収益状況も不安な中、別な意味で将来が不安です。
量ではなく質の事業性評価です。
ミドル層で地域に影響力のある企業から順番にひとつひとつ着実に事業理解を深めてください。そのためにはお客様の話を、納得がいくまでしっかり聞くことです。一歩一歩ですが、特効薬はありません。必ずや光が見えてきます。
成仏するのはまだ早いです。
短期継続融資への取り組みは、次の3点から金融機関のリレバンに対する本気度を測る格好の尺度になります。
①資金繰りの安定につながる本業支援の本丸のひとつ
②過去貸剥がしにあった経験のある企業は、トラウマがあり、短期継続融資への切り替えには抵抗感がある。
③メイン行等が強い立場で強引に(不良化流動資産等を切り出す力なく=経常運転資金を見極める力なく)すすめると当該金融機関の健全性に悪影響を及ぼすことになる。
”な~んちゃって短コロ”(森俊彦先生)は、仮面銀行が行うレイジー極まりない取組と思います。
短期継続融資に取り組む中にこそ、地域金融機関の営業店が取り組むべき事業性評価(理解)の本質があると考えています。