今日は、日本経済新聞中部版(5/17)「消えた利息 融資5兆円分」を読んでの感想です。
「ナゴヤ金融の今」第1部 異次元緩和から5年 (上) とありますから、後続があるのでしょうが、ひとまず思うところを書いてみようと思います。
「日銀が2013年、異次元緩和に踏み切ってから5年がたち、愛知、岐阜、三重県の地銀7行・グループでは、本業の融資から得られる貸出金利息が500億円減った。金利水準などから逆算すると、融資5兆円分の利息が吹き飛んだことになる。」(同記事)
マイナス金利云々ではなく、異次元緩和を引き金としての数値。ワタシの着眼点も同じです。
「『先月の企業向け融資でウチが肩代わりしたのは49件(32億円)、逆に肩代わりされたのは36件(17億円)。住宅ローンは……』――。ある中部の地銀では毎月、営業会議でこんな報告が続く。肩代わりは借り換えを意味する隠語。他の銀行から融資を受けている取引先に、より魅力的な条件を示して融資を自行に切り替えてもらう。ある行員は『パイ(資金需要)が増えない以上、ライバルの融資先に足しげく通いシェアを奪うしかない』と打ち明ける。」(同記事)
よく聞く話ですが、名古屋では多いのでしょうね。
名古屋もそうですが、事業者数の多い地域では組織的継続的なリレバンは根づいていません。現状はパワーセールスでボリュームが作れるからです。
組織的継続的リレバン (当然ながら顧客本位で持続可能) で合格点を差し上げられる金融機関のほとんどは人口減、事業者数の減少に悩み、悪評高い県別分析(競争のあり方報告書 ← 金融庁 有識者会議) では金融機関の存続が疑われる地域に所在します。
名古屋には組織的継続的なリレバンを推進している地域金融機関は「存在しない」というのがワタシの印象です。
トランザクションバンキングで叩き合いをしている限り、5年間で貸出金利息の約500億円が吹っ飛ぶことは、当然といえば当然です。
この事態に、同地域の地域銀行は要注意先などのミドルリスク層へ方向転換するとのことですが、従来と同じ「ぶら下がり融資」の域を出ないのであれば、問題の解決になりません。
《メインバンクとして業況が厳しくなっても逃げない (事業経営者の不実のケースは除く) 》という腹のくくりがなければ、この層 (とくに事業キャッシュフローが黒字でありながら、巨額の約定弁済で赤字となっている先)は、あっという間に低金利競争に巻き込まれてしまうでしょう。
「『リスクの度合いでいえばミドルだ』。中京銀行の永井涼頭取は取引先開拓の主戦場をこう表現する。銀行は取引先を経営の健全な順に『正常先』『要注意先』『破綻懸念先』などに分けており、ミドルは『要注意先』が中心。肩代わりは今まで起きにくかったリスクのやや高い取引先にも広がっている。今は『要注意先』でも各行は企業業績は改善に向かいつつあるとみて顧客争奪を急ぐ。愛知銀行はミドルと判断した企業へ貸出金残高を3843億円と、前年から6%伸ばした。本来はリスクに見合う高めの金利を取れるはずが、矢沢勝幸頭取は『収益は十分確保できなかった』と肩を落とす。」(同記事)
頭取が肩を落とす愛知銀行のミドルリスク層向け融資の戦略は、単なるぶら下がり融資ではなく、メインバンクとしてのコミットメント (財務支援、本業支援、経営改善、事業再生、リレバンの究極です) として、相手に伝わっているのでしょうか。聞いてみたいところです。
昨日、ある有識者の方と昼食をご一緒しました。
曰く、
「トラバンをやりたいのならば、人の大幅削減も含め、もっとコスト構造を見直さねばダメだ。一方、組織的継続的なリレバンで潰れた地域金融機関は一つもない。」
まったくおっしゃる通りです。
コメント
ナゴヤ、ですかあ
そういえば都銀で東海銀行なんてのがありました。
あそこ出身の方はどうしてるんだろう。
アッシの古巣は四方八方にいい顔しなければならない会社だったので、工場ごとに建設会社が違うし、諸経費の振込先も事業部ごとに指定銀行が違ってたりして、渡り歩いたアッシも、協和、三和、富士、三井系2支店に口座が残ってます。
今はメイン口座を除いて残金は殆どナシだから銀行さんはざぞ迷惑だろうなあ。
あくまで私見ですが、三菱UFJはもったいないですなあ、東京を外すなんて。
いっそ「東京銀」にした方がよほど通りがいいのに、、、
先日、名古屋郊外に位置する某金融機関の役員に、わざわざ名古屋まで出ていただいて酒席を囲みました。
「引き当ては怖くない」と言って、生き生きとして楽しそうに、リレーバンについて語ってくださいました。
数年前、「石橋をたたいても渡らないのが我が社だ!」と言って企業文化の変革の必要性をおっしゃっていたのですが・・・。
確実に変わり始めてます。
「企業文化を変えるために何度も何度も言い続けるしかない」と断言された地域銀行のトップの方と、昨日、お目にかかりました。
リレバンに本気で取り組むと、微塵のブレもないそのヒトはとても嬉しそうでした。