十八銀行のFFG入りに公取委がゴーサインを出し、第四北越FGの発足を10月1日に控え、「地域金融機関の再編」に関するメディア報道が目立ちます。
内容的には、金融機関の財務数値で統合合併の可否をさぐる浅薄な分析がほとんど。
目新しい視点 (たとえば、労働集約型のリレバン深掘りための人員増強が目的の合併、こういう事例もあるですが) もなく、失礼ながら読むに値しません。
ワタシ自身としては、統合合併は救済がらみを除くと効果薄、今や金融機関の体力が落ちて合併費用の捻出すらおぼつかず、合併後のシナジー効果を得る前に息切れとなることが見えているため、今後統合合併に進むという論調には強い違和感を感じています。
そういう中、9月29日の西日本新聞に掲載された森俊彦さん (もと日本銀行金融高度化センター長、現 日本動産鑑定会長) のインタビュー記事は、まさに我が意を得たりでした。
ポイントを列挙します。
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〜経営統合は、銀行が潰れるとサービスができなくなるという自己本位の発想からきている。顧客本位の立場で考えると統合合併の前にやるべきことがある。
〜オーバーバンキング現象は優良企業に起こっており、課題を抱える中小零細企業には金融機関が寄り添っていない。
〜統合合併の合理化効果は疑問。単独や業務提携などで将来像を描いて、突き進んでいる金融機関はある。
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中小企業経営者と常に接し、悩みを聞いている森さんの意見には、数字分析に頼る専門家?とは異なる説得力があります。
「このたび債権譲渡に応じた長崎県の中小企業社長からは『がっかりした』との声があり、取引先からの大切な信頼を失った」
この森さんのメッセージを西日本新聞 (長崎県での販売シェアは高いそうです) の読者はどのようにとらえるでしょうか。
コメント
同感です。合併による、お客様とのリレーションの劣化、組織文化の希薄化、意思決定の遅れ等、目に見えない大切な資本の劣化は、表面的なシナジー効果?などではとてもカバー出来ません。
合併銀行に入行され、その後、また合併を経験された新田さんのご意見、重く受けとめます。
今回の金融行政方針からもにじむものがあります。
金融行政方針には、「再編は顧客本位の持続可能性のあるビジネスモデル構築のための一つの手段」ということが書かれており、
弱者に対する配慮も明記されています。
〜地域金融は、中長期的な信頼関係の構築に基づくサービスという特性を有しており、競争が 確保されていても「現在の取引金融機関を信頼している」場合や、競合金融機関の有無にかか わらず元々借換えが難しい信用力の低い企業の場合に、「借換えを検討しない」又は「借換え を検討しても実際には借換えを行わない」可能性がある。したがって、借換えの可否や意思の 有無を競争状況の認定に用いる際には、こうした特性を踏まえ、慎重に行う必要がある。」(88ページ)
至極ごもっとも。
例のヘンテコな日本地図は何だったんでしょうか。