金融庁の監督検査には2つの軸があります。
縦軸 (収益力、健全性) と横軸 (金融仲介の改善) です。
両者をいかにバランスさせるかが、地域金融機経営の基本ですが、それを監督検査する行政サイドは縦軸と横軸とで別々の部署が担当しています。
横軸の勘所は、
・顧客本位 (←企業ヒアリング、アンケートによる裏取りも)
・持続可能性 (→中長期的な収益につながる)
・顧客との共通価値の創造 (CSV)
・地域特性に合致、画一的でない
・資本の活用 (←金融機能強化法の活用も含め)
なのですが、横軸の成果が出るまでには時間が必須です。
また、横軸のモニタリング手法は“対話”が中心になりますので、行政側に高度なスキルが要求されます。
一方、縦軸は過去からの数値分析ですから、難易度は高くありません。
大事なポイントは、「横軸ありき、縦軸は結果と捉えるべき」ということです。
縦軸が強く出すぎると横軸が死滅してしまい、本末転倒になりかねません。
すなわち、地域金融機関は、顧客本位で持続可能な、顧客との共通価値創造のビジネスモデルを放棄します。縦軸のプレッシャーから、自己中心的になり、短期的で狩猟民族的な刈り取り型の収益を追い求めるでしょう。
結果として、地域企業の経営改善や事業再生はおろそかになり、地域崩壊へとつながるのです。
さて、
「最近の金融庁のモニタリングは縦軸偏重ではないか」
これが多くの地域金融機関の声です。
いい加減な横軸しか描けないようなレイジーな地域金融機関 (多数派です) が声を上げても説得力はありません。
ところが、地道に横軸を育て上げようとしている地域金融機関に対し、縦軸から過去の問題点を殊更にえぐり出すやり方は感心できません。
これでは育成庁ではなく、処分庁です。
「縦軸の偏重は、地方創生の大きな障害となる」
このことを改めて問題提起したいと思います。
コメント
同感です。次回の研究会で、問題提起してみます。
監督側にも見識がないと、対話は成立しません。