八代アソシエイツの hp 上に開示された、Creating Shared Value Banking (CSVB) の経典には、多くのアクセスがあったようです。
経典をご覧になられた方は
「CSVB が儲かるという視点の記載がない」
ことに気づかれたと思います。
経典ですから、そのような些末なことは不要とワタシは思うのですが、
「CSVB の何たるかは理解したが、それって儲かるの? 、リレバンと同じで儲からないのでは ? 」
という意見がありました。
おい、おい、、、
こういうことを言う人たちのほとんどは、リレバンであってもプロダクト商品サービスに勝手に仕立てあげて、それを尻を叩いて売りさばくという行動をとります。
これが八代さんのいうところの「汚れたリレバン」です。
そういえば、先週お目にかかった金融庁の某幹部からも、「地域金融機関は何でもかんでもプロダクトアウトに落とし込む」との発言があり、膝を打ちました。
リレバンは“思想”です。
その思想を行動原理に落とし込むのが経営なのですが、 汚れたリレバンを推し進める金融機関の経営者はリレバン思想を理解しているとはいえません。
そして、CSV (共通価値の創造) は、リレバン以上に思想の色彩が強いものだと思います。
さて、
八代さんの経典にある 2 つの地域銀行のケースは、CSV 思想が無意識 ? のうちに行動原理に組み込まれている事例です。
八代さんによれば、両銀行の平成29年度の貸出金利回りは、全国地域銀行 (平均値) が 7bp 低下する中で、3bp しか低下していないとのこと。
さらに、多くの地域銀行が避けて通る「事業性評価に基づく融資を行っている与信先の融資金利と全融資金利の差」(選択ベンチマーク 6 番) という物差しをあててみると、CSVB と収益との因果関係が裏付けられます。
CSVB の一丁目一番地は顧客の事業内容の理解です。“真の意味での事業性評価” (事業性評価シートを作ってお茶を濁すことではない) がなければ CSVB は始まりません。
八代さん曰く、両銀行に選択ベンチマーク6番を適用すると、事業性評価に基づく融資の貸出金利は、全融資先金利のそれよりも30bp~50bp ほど高くなっているようです。
ちなみに、両行とも小規模地域銀行ですが、小規模であるがゆえに効率が悪く、不良債権も減りにくいため、雑誌等での規模や不良債権によるランキングでは下位の常連です、苦笑。
実を言うと、先月の金融機能強化法の審査会で、ワタシは公的資金を導入している銀行に対し、同様の質問をしたのですが、両銀行ほどではなくても同じような答えでした。
CSVB をいかに行動原理に落とし込むか、
これこそが地域金融機関の経営です。
でも、ルールベース症候群の経営者には無理でしょう。
顧客のためにも、地域のためにも、従業員のためにも、こういう経営者はさっさと退場していただきたいものです。
コメント
同じ財務局であっても、
「慌てて事業性評価シートを作る必要はないですよ。じっくり考えて取り組んでください」と言われたと思ったら、その上席から「すぐに作りなさい」という指導を受けたという話を聞きました。
ある研究会で「短期継続融資の重要性はよく理解できたが、5年後の収益には結びつかない」という趣旨の発言をされた有力銀行の幹部がいらっしゃいました。
CSVBを定着させるにはまだ時間がかかりそうです。
救いは、財務局の指導を受けた直後にオンサイトヒアリングで、この金融機関の取り組みを評価していただいたとお聞きしたことです。
混沌とした中で、着実に変わり始めたかな?というところが救いです。
事業性評価シートの作成を強要する財務局の職員、大バカ者ですね。腹が立ちます。今度、金融庁の幹部との面談の機会にタレコミます。
粘り強く対話を続けたいと思います。監督する側とも、監督される側とも。志を共有する方との連携が救いです。