一昨日の未来投資会議で、地方銀行の競争政策が議論になりました。
メディアの報道を見て、同会議が地方銀行の業務と地方のバス事業を同じ土俵で論じていることに違和感を感じました。
地方銀行の業務がトランザクションバンキングだけであるのなら分からないわけではありませんが。
以下は8月に某メディアに送った原稿です。
このメディアさん、地銀合併を後押しする論調が強いこともあり、それ以上にワタシの力不足でボツになりました、苦笑。
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題名: 地域金融の未来図
(2018/8/18)
6月22日、森金融庁の集大成ともいえる政策評価委員会、金融仲介の改善に向けての検討会議に出席した。
論客揃いのメンバーと議論をする中で、もはや躊躇している時間はなく、抜本的な変革をしないと地域金融はとんでもないことになると背筋が寒くなった。地域金融の機能不全ということは地域経済・社会が崩壊することにつながる。地方創生どころの話ではない。
地域金融の将来を考えるにあたって重要なポイントを3点にまとめてみた。
(1) 決済などの金融インフラ機能やプロダクトアウトのトランザクションバンキングの世界では、デジタル化の波は思いのほか早く、非金融業界からの参入は当たり前であり、かつグローバル単位で考える必要がある。銀行同士の統合合併や業界団体でどうこうするというレベルをはるかに超えている。この動きにどう対処するかだ。
(2) その対極にはリレーションシップバンキング (リレバン) の世界がある。顧客との間で確固たる信頼感を築き、顧客の業況が悪化しても (顧客が誠実な経営を行なっている限り) 絶対に逃げない姿勢で、顧客の財務面のみならず本業面での支援をし続けるビジネスモデルである。
リレバンは顧客接点の強化こそが生命線である。欧米の地域金融機関は日本のそれよりもはるかに規模が小さく、顧客接点を最も重要視しているように見える。日本でも組織的継続的リレバンで成果を上げている数少ない金融機関の経営者は、意味不明な膨張を志向せず、適正規模を念頭に置いているのは明確だ。
現在の地方銀行のサイズは大きすぎる。これからは県単位ではなくコミュニティ単位での地域金融機関が主流になるのではないか。我が町の金融機関である。コミュニティに金融機関がない空白地帯 (かなり多い) には、新たに作る必要があると思っている。
コミュニティバンクの生命線は「顧客接点と資本」である。「資本」の出し手の中心は地元関係者であり、「資本」は地域経済・社会の活性化のために有効活用されるべきものだ。そして「顧客接点」のところは、徹底した労働集約型の「職人」の世界である。その一方で、バックヤードは金融機関連携や業務提携での広域化、さらには非金融をも巻き込んだスケールメリットによる効率化を目指すしかない。
要約すれば、リレバンの本質はダウンサイジングとアライアンスである。
(3) 上記のような展開の中で、地域金融機関が生き残れるかどうか、つまり地域の浮沈がかかっているのであるが、それは経営トップ次第である。
地域金融機関のトップの育成、トップを生み出す土壌ともいえるガバナンスの重要性はますます高まる一方だ。
(了)
コメント
多分、某メディアさんは先生のこの文書の内容理解できなかったんだと思います。メディア関係の多くの人は一般の人と同じく金融機関に関しての知識はトランザクション的商品しかわからないのではないかと思います。
でもいい内容の文章です。
6月22日の「一行取引を目指せ」が土台となっているものと思います。
「信頼」。
地域金融機関が顧客と一緒に築いていかなけらばならない一番大切にしなければいけないものです。
今日、第一勧業信用組合はみちのく銀行さんとの業務連携の調印をいたしました。この連携の意義がわかる方は、地域金融のプロだと思います。私達はみちのく銀行さんと一緒に、日本の未来を創ります❗
地域金融の「プロ」として日本の新しい未来を実現させる事を願っています。本当に頑張って初志貫徹させて下さい。陰ながら応援しいたします。
ミザールさん、
お褒めの言葉をいただき恐縮です。
本文中にあるボツ原稿に書かれていることは、同時期に長崎で起こったことと真逆の内容です。
長崎の合併を後押ししている人たちからすれば、面白くないのでしょう。送ったコラムは異論を掲載するコーナーなので、どうかなと思ったのですが、やはりボツ。
どちらが正しかったか。どちらが長崎の地域の人たちにとって幸せだったのか、結果は割と早く出るものと思っています。