先日、ある地域銀行の経営幹部たちと勉強会をしました。
この銀行は15年余りのリレーションシップバンキングの歴史の中で、かなり早い段階から組織的継続的な取り組みを行なっています。
なんちゃってリレバンの銀行が林立する中で、この銀行に対する顧客評価は高いものと思われます。
こういう銀行においてですら、
改めてリレバンの基本を再確認し、初心に戻らねばならないと感じたのです。
すなわち、
企業の正常運転資金を正しく計測して、企業実態を動態モニタリングすることの徹底です。
これこそが事業性評価 (上から目線で好きな言葉ではありませんが) の一丁目一番地であり、これなくして事業性評価シートなどを作っても砂上の楼閣です。
残念ながら、多くの地域金融機関でこの点が周知徹底されていません。
事業性評価シートづくりの取組みは熱心でも。
コメント
確かに事業性評価という言葉は上から目線の感じありますね。
私のところも、ただ評価シートを作ることに目的があってそこから形だけになっています。
お客さんの事業に関心を持つきっかけになったことの意義は大きかったのですが、そこからどんなお手伝いできるかにはまだまだ進んでいません。
稟議書への添付資料として義務となっているだけです。
そういうところ多いのではないでしょうか?
【金融機関は数字を見る力を失った。否、放棄した】
これが地域金融機関の実情です。
金融当局は「事業性評価に基づく融資」を初めて発信したとき、その必要性を次のように言いました。
~金融機関は数字ばかり見て、事業を見ていない。だから事業性評価に基づく融資が必要である~
残念ながら実態は上記の通りです。数字すら見ていないのです。
10月某協会の関連部部長・支店長研修で、「定型的な事業性評価シートは廃止すべき」と言い切ってきました。もう一方の講師が基調講演されてましたが、やはり、私と同様、「廃止すべきだ」とご発言なさっていました。
近代セールス2017年4月1日号の日下智晴(現)地域金融生産性向上支援室長へのインタビュー記事に次のように記されています。
~本来事業性評価というものは個々の企業の実態に合わせておこなうものであり、自己査定のように厳格な手順や基準を定めるものではない。例えば、取引先企業が100あれば100とおりの事業性評価があるはず。
情報収集のために事業性評価シートを用意することは構わないが、定型フォームに取引先情報を記入し保存すれば済むという性格のとりくみではない(攻略)~
と明記されています。
また、昨年4月経営者保証ガイドライン活用事例集に追加された事例(当時No13、現在No15)には
~(前略)当社のビジネスモデルを踏まえて、売掛先別の回収サイトや棚卸資産の内容を充分に把握(事業性評価)するとともに、以下の点を勘案し(攻略)~
と、わざわざ、かっこ書きで財務実態と収益力実態の把握こそが「事業性評価」の一丁目一番地を明示しています。
「業推無罪の文化」から脱却し「金融排除から金融包摂」に向かう地域金融を取り戻す鍵はここにあります。
形式に降伏すれば、実質を失います。
事業性評価シートを懸命に作っているのに、旅芸人さんは厳しい・・・。
こんな声が聞こえてきそうですね。
規模の小さめの中小企業についてではありますが、懸命に作った事業性評価シートの事業性評価としての実効性を確認する方法があります。
業種や事業によっては、事業性評価がやさしい業種や事業が存在します。代表的なものは審査時に長期の事業計画で事業性評価をすませることができる業種や事業、介護施設なども含めた不動産賃貸や太陽光売電事業などです。このような業種は総じて総資本回転率が低いという定量面での特徴があり、金融や物品賃貸も含まれます。そしてこれらの業種では銀行にとってもボリュームが稼げるため、お得意先業種です。地域銀行の近年の貸出ボリュームの伸びの8割程度は個人ローン公共向けとこうした業種だけで実現しています。
懸命に作った事業性評価シート作成先の平均的な総資本回転率を、事業性評価シートの作り方が足りない同僚や他店や他行と比べてみてください。平均的な総資本回転率が低いほど、事業性評価が簡単で済むところを選んで事業性評価シートを懸命に作っているのではないでしょうか?できる銀行員ほど、効率的に目標を達成する方法を見つけることに長けています。プロダクトアウト営業漬けが磨きをかけたテクニックですから。楽勝業種ばかり選んで、事業性評価に基づく貸出を推進していませんかね?
私は評価という言葉が、何となく上から目線で、あまり好きではありません。
当組の目利きシートは、結局、組合員との対話シートであったような気がしています。
今年1月 某地銀で、
「SWOT分析、ビジネス俯瞰図、,4C分析を、柱とした定型的な事業性評価シートのようなものを作って、全稟議に添付を求めるなどと、馬鹿なことをやっているところがある」
と発言したところ、営業推進部長から
「わが行では2週間前に、全稟議に添付するように示達したばかりだ」と・・・。
今頃、まさか、???
職員を疲弊させ、(余計な仕事が加わったと)不満を募るのが関の山、場合によっては抜け道となり、業推無罪に使われれば、危険な債権を積み上げ自行の健全性に影響が及ぶことになる。一から考え直した方がいいのでは・・・。
と、お話してきましたが、どうなっていることやら(苦笑い)。