11月23日のブログで京都信用金庫 増田会長が「リレーションシップ インパクト論」を披露されたジンテックセミナーについて書きました。
ありがたいことに、番外編として、増田さんより、リレーションシップ インパクトの考えに至るまでの流れを教えていただく機会を得ました。
短期志向で目先の利益にこだわる経営が、経営理念と組織風土とを乖離させた。それがヒューマンアセットを破壊した。
その反省から、10年以上かけて組織風土改革を行う過程で出てきたのがリレーションシップ インパクトの考え方であり、これで職員たちが息を吹き返したという話は感動的でした。
昨日のブログに対し、第一勧業信用組合の新田理事長から次のようにコメントをいただきました。
〜リレーションシップキャピタルには、職員も含んでいます。職員が成長すれば、リレーションシップキャピタルは増加します。共通価値の創造のためには、職員の成長が必要なのです。
さて、
「従業員あっての地域金融機関」と言うのは簡単です。
例外なく地域金融機関の経営者はこのように言いますが、
その実態は?
増田さんや新田さんのような言動一致の経営者はまだまだマイノリティです。従業員は使い捨てとしか思えない地域金融機関は少なくありません。
このたび、イギリスのコーポレートガバナンス・コードが改訂されました。
今回ポイントとなるのは、取締役会に従業員の声が届くようにする仕組みが盛り込まれたところです。
〜「従業員が問題を提起できるようにしなければならない」。7月に公表された改定指針の目玉が、企業の利害関係者(ステークホルダー)として従業員を明確に位置づけた点だ。具体策として (1)従業員から取締役を選ぶ (2)公式な従業員諮問パネルを設ける (3)従業員担当の非業務執行取締役をおく――を挙げ、このうち1つ以上の実施を義務付けた。
(8月22日、日本経済新聞)
日本のコーポレートガバナンス・コードも本年夏に改定されましたが、イギリスと比べると周回遅れの感は否めません。
コメント
リレーションシップ・インパクト論の「ルートR」は、方策なのか、或いは、協同組織そのものを表しているのか。私には興味深い問いです。すなわち地銀で本当にできるか、です。
資産査定・引当が、国際会計基準(IFRS)、米国会計基準、バーゼルともに「将来損失の反映」に突き進もうとしている昨今、「過去」にとらわれすぎた日本がギアチェンジし、将来損失に向き合おうとするならば、必然的に顧客の定性全体に食い込まなければ、将来返済能力を判定できません。すなわちリレバン程度ができないのであれば、数年後にも到来するであろう、予想信用損失の世界では生き残れないのではないか、という素朴な疑問です。
こう考えると、ルートRとは、単なる協同組織論を超えて、未来の金融機関の問題そのものとも言えそうです。さて、果たして・・・
ルートRという発想は経済学で北欧学派と呼ばれる人たちの考え方に親和性が高いと思います。新田さんの言うようにソーシャルキャピタルを重視する考えです。したがってそれなりの普遍性を有するはずです。
橋本様
地銀は置いといて、共同組織金融機関にプルーデンスの議論が必要であるのか?というのが私の疑問です。前提には経営者自らが地域によりそうという気概を持っているというのがありますが・・・。
もちろん、合併を控えながら地域に大儀を説明し同意を得るという努力を惜しみ、取り巻きと豪華客船でクルージングを楽しんでいるといった経営者がいるとしたら別に話になるのですが(笑)。
増田会長に教えて頂いて、リレーションシップマーケティングの勉強をしています。そもそも、リレーションシップマーケティングを、金融に当てはめたものが、リレーションシップバンキングであったように理解しています。
言語の壁があったにせよ、日本の研究が英語の文献に偏っているように感じています。
リレーションシップマーケティングでは、双方向の関係性を重視し、これが価値創造を生み出すことを示唆しています。
共通価値の創造をポーターが語る以前に、こうした考え方があったことに驚いています。私は研究者ではありませんので、どなたか掘り下げて教えてください。
リレーションシップ・バンキングは和製英語です。その当時アメリカではリレーションシップ・レンディングといっておりました。つまり、情報の非対称性が高い先向けの情報生産の仕方に関係性という手段が有効だという、貸出方法のことです。詳しくは、早稲田大学の薮下教授が書いた新書が参考となります。
橋本さま
Rの縦軸は、協同組合の本質そのものです。したがって超えるものではありません。そして順番が大事です。それが増田会長のお考えの(ルート)という言葉ではないかと思います。つまり、人と人との関係性を示すRがあって始めて横軸のPが正しい儲けとなるということ。このルートを採らない協同組織金融機関は、本来は無いはずですが…
奈良さま
リレバンをリレーションシップレンディングより深める議論をしているのです。だからリレバンアドバンスなのです。