日本経済新聞が「地銀波乱」というセンセーショナルな特集を始めました。
第一回目の本日は、スルガ銀行の預金減少や、業況悪化の前の自主廃業の話が書かれていましたが、その行間からは「早期警戒制度」の整備拡充への示唆を読み取ることができました。
ところで、
森金融庁の時代に地域銀行に対する「ビジネスモデル検査」というものがありました。
巷間伝えられるところでは、平成28事務年度に3行、29事務年度に4行に対して行われたようです。そのうちの一つが検査後に業務改善命令が発せられ、トップ交代となった F銀行です。
ビジネスモデル検査は「深刻な状況にも関わらず、抜本的な対策が打たれておらず、ジリ貧状態に陥っており、このまま放置しておけば、将来の健全性がおぼつかない金融機関」が対象となったものとワタシは思っています。
とはいえ、将来の健全性に向けての“施策”が、激しい金利競争で収益性の見込めない優良先融資 (地域外も含む) でのボリューム追求であったり、いずれAIフィンテックに取って代わられるような時限性のあるものだったり、刹那的なコスト削減だけであったり、地元顧客に損失を押しつける可能性のある自己中心的なプロダクトアウトものであったり、稚拙な管理態勢での過度なリスクテイクの有価証券運用であったり。
こういう施策では、まったく話になりません。
将来の健全性に向けた施策は、時間軸を要するものの、持続可能な顧客本位のビジネスモデルへの転換しかないものと考えます。このビジネスモデルが顧客との共通価値の創造であることは言うまでもありません。
持続可能な顧客本位の金融仲介があってこその金融機関のプルーデンスなのです。
このような論点で先の「ビジネスモデル検査」を見直してみれば、これこそが早期警戒制度に則った「対話」なのではないでしょうか。
遺憾ながら、「深刻な状況にも関わらず、抜本的な対策も打たれておらず、ジリ貧状態に陥っており、このまま放置しておけば、将来の健全性がおぼつかない金融機関」は、28事務年度、29事務年度と比べても増加しているものと思われます。
由々しき問題です。
金融庁の検査リソースの大部分はここに注がれねばなりません。だからこそ、昨年11月に金融庁の検査に関わる組織変更があったものと推察されます。
検査官は早期警戒制度の観点からの「対話能力」が問われることになります。
コメント
問われているのは、金融機関の「収益性」というよりも「収益の妥当性」です。
間違っても「目先の収益が厳しい」→「妥当性はさておき、収益性なき金融機関の早期処理」のような、短絡的な思考による議論にならないよう注視せねばなりません。
「妥当性」を欠いた金融は、暴力であり害悪です。国民はそんなものを求めていません。