検査マニュアルがなくなったらどうする

本年度で金融検査マニュアル廃止との流れの中で、多くの地域金融機関から、方向性とその対策について、照会を受けます。

基本的には「金融機関の経営理念に基づいたプリンシプル・ベースでやれば良いではないか」、「それが地域顧客や株主などにきちんと説明できれば良い」、「当局ともその趣旨でしっかりと対話をすれば良い」ということだと思うのですが、

思考停止の地域金融機関にとって、何らかの羅針盤がないと身動きできないようです。さもありなん。

ポスト検査マニュアル中で一番注目度の高い「引当・償却」ですが、昨年行われた委員会の議論を踏まえた「ディスカッションペーパー」が現在、金融庁において作成途上です。

委員会メンバーだった関係で、ディスカッションペーパーの枠組みはおおよそ推測できるのですが、どのようなものとなるか、発表を首を長くして待っています。


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コメント

  1. 橋本卓典 より:

    さすがの金融庁もたじろいでいて、すこし遅れるかもしれませんね。

    検査マニュアルは、ざっくりと

    ①チェックリスト

    ②別表

    の二本柱で構成されていました。

    ①チェックリストで構築した内部管理の体制整備は頭から否定されるべき、というものではないでしょう。そして、多胡さんのおっしゃる通り、★経営理念と矛盾したものとなっていないのかが重要になってきます。さらに★金融庁は「探究型対話」で、その実態に迫っていくことになります。対話には、幹部も乗り出してくるはずです。金融庁の「聴く力」もまだまだでしょうから、研鑽あるのみです。

    ②別表の廃止は、「過去」から「未来」志向への転換を意味するでしょう。

    「過去」の返済能力に基づく格付けと「過去」の倒産・貸倒実績率に基づく引当額の算出という、非常事態システムが20年続きました。

    しばらく不況で、しばらく倒産続きで、しばらくビジネスモデルなどは考える余裕はないという、非常事態の定常化、確率論でつくられたのが別表です。簡単に言えば「不良債権をつくらない」ためだけにつくられたものです。「地域に対してどうか」という思想は、そもそも別表自体は要求していません。

    しかし、世界を見渡せば、国際会計基準(IFRS)9、米国会計基準も「将来損失」をより反映させる方向に見直されています。バーゼルの引当議論も同様の方向で見直されるでしょう。日本も「未来」から逃げられません。

    必然的に「将来キャッシュフロー」を読み込むということが求められます。

    企業にはライフステージがあり、返済能力も変わります。そして資金使途です。運転資金なのか、設備資金なのか、赤字資金なのか。そこにどのような融資で手当していくことが、最適なのか。

    金融の人はたじろぎますが、金融以外の人が聞けば、「当たり前」の話がようやく始まります。