病気になる前は頻繁に地方に出向いて、地域金融機関の役職員向けに話をしていました。
講演会のあとに会食の機会を設けていただき、そこで経営陣や本部の方々とお話をすることになるのですが、当該金融機関のリレバンの本気度を計測するには絶好の機会でした。
「“参考になる”お話、ありがとうございました」
こういう感想を聞きながら、お刺身や茶碗蒸しをつついていたことが、しばしばありました。
「きっと、何もやらないだろうな」(ワタシは「参考になる」という言葉にカチンときます。心が感じられません。)
図星でした。その後、イベントや属人的な取り組みでお茶を濁す“なんちゃって”リレバンが掲載されている、それらの金融機関のディスクロージャー誌をパラパラとめくることになります。
ところで、
十数年前のことですが、嬉しい誤算がありました。
ある地域金融機関において、講演会が終わったあとの懇親会の席に集結した全役員から、講演内容につき質問攻めにあい、食事がまったく取れない状況になりました。役員諸氏がとにかく、しゃべる、しゃべる。ぐったりしましたが、心地よい疲れが残りました。
地域が大好き、仕事が大好き、そしてとんがった役員さんたちは、十数年を経て世代交代しましたが、その遺伝子はいまも脈々と受け継がれています。
この金融機関はワタシから見て、組織的継続的リレバンの優等生。強いライバルがいますが、地域での存在感は抜群です。
このように経営陣が常に真剣勝負の議論をする金融機関からは、マイナス金利や人口減といった弱音は聞こえてきませんし、安易にコンサル営業などという言葉も出てきません。
コメント
足掛け5年、お仕事をいただいている信用金庫があります。この金庫では、理事長、役職員から泣き言を聞いたことがありません。
経営方針も
①郷土の発展の為
➁会員(得意先)の繁栄の為
③金庫と職員の為
と、単純明快です。順番も郷土が最初で、金庫が最後です。職員を大切にする姿勢も明確に示されています。
多胡先生の仰る金融機関とは違うかもしれませんが、この金庫の存在感も大したもんです。
本気度の計測。その通りです。非常に分かりやすいです(笑)
なぜ、そのような対照的なことが起きるのかが興味深いです。
文化としか形容できないものですが、もう少し他の見方はできないものでしょうか。「個」が、他人事ではなく自分事として捉えている訳ですね。
では、どうして自分事として捉えられるのでしょうか。逆に、どうして自分事として捉えられないのでしょうか。その差は、どこにあるのか。どこで分岐点があったのか。気になります。
橋本さん
父親の背中、受けた教育の質、人や良書との出会い、あたりがありそうです。
私は当組の管理職に、当事者意識という言葉を使っています。責任ある立場の人間が、サラリーマンでは困るのです。当事者意識の無い人間が昇格していく組織にならないよう、人事評価のあり方が問われています。ちなみに当組は、従来の人事評価シートを廃止いたしました。