「魂の会社再建」(村松謙一著、東洋経済新報社)、
「会社救済ファイル 6、不可解な基準なんて要らない」
の章には、民事再生手続における、某政府系金融機関 (大口債権者) とのやり取りが描かれています。
当該箇所を引用します。
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〜「われわれは全国で扱いが異ならないようにバランスを取って、民事再生の再生計画案に対し検討を進めることになっていますから、メーカーの場合は10%以上の配当 (弁済率) じゃないと受け入れられません。」
(中略)
私 (村松さん) も多くの再建事案について政府系金融機関と対応しているが、メーカーの場合は10%を超える配当でなければ賛成できないとの基準をもっているとの話は、このとき初めて聞いた。
(中略)
「そもそも、貴殿のような政府系金融機関の存在価値・存在理由は、通常の民間の金融機関と違い、全国420万社余りある中小企業の健全育成、後押しというきわめて公的、社会的側面を有した政策的機関だということではないですか。大企業が花とすれば、この日本という社会を根っこで支えてきたのは、この420万社の弱小零細の中小企業ですよ。
だからこそ、たしかに儲けも大切ですが、中小企業がアゲインストの風を受けながら、体力を振り絞って這い上がってくるところを、太陽のような温かな眼差しで見守り、助言を述べ、再建の手助けをしてくれることが、政府系金融機関たる貴殿の役割ではないですか。地元金融機関から見放された中小企業の最後の頼みとなる、親のような政府系金融機関の皆さんが見放してしまったら、生きる望みを失ってしまう。真暗闇の中で、それでも必死に生きようとしている中小企業を、誰が助けるのですか。」
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相当前の話ですので、今は改善されているものと思いますが、この政府系金融機関 (どこか知りませんが) の形式主義 (ガチガチのルールベース) には怒りすら覚えます。
昨年から政府系金融機関である商工中金の社外取締役を務めていますが、このような形式主義に陥らないよう、しっかり任務 (監督業務) を果たさねばならぬと気を引き締めています。