おくりびとに金融機関はいなかった

NHKスペシャル「大廃業時代 ~ 会社を看取るおくりびと」の再放送(10月9日)の録画を見ました。

https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20191006

弁護士や経営コンサルタントなどの“おくりびと”がリスクの高い企業を無用に延命するのではなく、取引先や従業員、そして地域経済にも大きなダメージを与えない「いい廃業」を進めている姿が描かれていました。

ここに地域金融機関が出てこないことに、業界に関わる人間として非常に恥ずかしさを覚えました。情けない。

地域金融機関の事業承継は「まずフィーありき」のところがあります。

ですから、番組で取り上げられていた小規模企業 / 個人事業主の規模ではそれなりの手数料収入が期待できず、放置されているといっても過言ではありません。

地域銀行どころか、わが町の金融機関である協同組織金融機関の中にもこのようなスタンスのところがあることは、由々しき問題です。

8日のブログへの橋本さんのコメントにもありますが、フィンテックの第一人者は「事業をやる人を大事にしなさい」と言いました。

たとえ小規模事業者であっても、地域において事業を行う人の大切な集団です。事業再生を交えた第二創業も含め、事業承継支援は必須です。

目先の利益だけを考えて、こういう層の事業承継問題に背を向けていて良いはずがありません。

ギリシャのような公務員集団になったら、地域金融機関は地域を捨てれば良いとでも思っているのでしょうか。

 


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コメント

  1. 新田信行 より:

    協同組織金融機関には、頑張っているところもあるのですが…。メディアには、そちらも取りあげて欲しいですね。

  2. 橋本卓典 より:

    私も番組をみました。その上で、廃業に至る前に関与していくある金融機関を先日取材し、改めて考えさせられました。

    「無理でしょ」と当該金融機関の人間も初めは思う案件が持ち込まれ、巻き込まれるうちに、「これはいけるんじゃないか」と考えが次第に変わり、無理だったはずの案件を復活させてしまったのです。1つや2つではありません。驚くべきことに「やると決めた案件は実質破綻先だろうが、破綻懸念先だろうが全先、成功させている」というのです。仕掛かり案件は100%成功です。次回作で詳細を書きますが、金融マンのスキルが高いことは多分そうなのですが、それ以上に「寄り添って深く事情や話を聞く」、「自分だけでは対処できない場合は組織外のネットワークの力を躊躇なく頼る」「組織内の抵抗勢力との論争、軋轢を楽しむ」という実に興味深い言葉をいただきました。

    何より心に残るのは「ポジティブである」という際だった特徴です。ポジティブであること自体、事態を照らして、光合成のような化学反応をもたらしているように感じるのです。確率論でも連結会計では計測できない「連鎖」です。足し算ではなく掛け算です。その逆に、おそらくネガティブ、心理的不安は「湿気」という負の連鎖をもたらすでしょう。引き算ではなくおそらく割り算の効果をもたらすのではないでしょうか。カビは1週間に1万倍にも増殖するケースがあるそうです。

    「おくりびと」なる、最もらしい呼称で、廃業需要を掘り起こしていこうとするアプローチは本当に正しいのか、という疑問が私にはあります。

    たられば、パラレルワールドを生きることができない我々には、もう一つの道を体験することはできません。ただ、番組でも「やめてしまうという選択」が、その後に何をもたらしたのかという検証が、いまひとつ腑に落ちませんでした。番組に登場していた女性経営者は廃業して、百貨店の販売員に就職していましたが、前途は幸せになったのでしょうか。地域は明るくなったのでしょうか。「あの会社が廃業しちゃったよ」というニュースは、「それで今はすごく幸せだってさ」という続報に繋がったのでしょうか。むしろポジティブニュースではなく、ネガティブニュースとして、廃業需要を拡大させることはないでしょうか?

    「新陳代謝、新陳代謝」と、安易に、それっぽく口にする人ほど、何か安全な高台に腰掛けていて、誰からも批判されにくい無責任な言葉を放っているような気がしてなりません。実際、当事者でもないので法的にも何ら責任を取らないでしょう。

    同じ言葉でも、共感を呼んだり、逆に反感を呼んでしまう場合があります。人は、信仰する生き物であることから逃れられません。言葉に説得力を持たせたければ、自ら行動する以外にありません。私の場合は金融のスキルがないので、現地まで赴いて現場の人に話を聞くことです。

    打席に立つと決めたら100%再生させている現場の人が、無念の表情を浮かべて「こればかりは廃業しかないと思います」という言葉にこそ、胸打たれる迫力があるように思えます。少なくとも多くの金融機関は、この対象外だと私の目には映ります。胸に手を当てて考えるべきでしょう。