コロナ禍に苦しむ中小小規模事業者にとっての大きな負担は家賃と人件費ということで、永田町の方でいろいろと動きが出ています。
家賃と人件費に負けず劣らず重いのは借入金の元本部分の返済ですが、これについては3月上旬の段階で金融庁が金融機関に対し返済猶予を要請してます。
https://www.fsa.go.jp/ordinary/coronavirus202001/06.pdf
3月末の数値は「3月10日から同月末までに、返済期限の猶予といった融資条件変更の申し込みがあったのは2万6592件。うち3月末までに9996件の審査が終了し、99.7%にあたる9963件で条件を変更した。」(日経新聞、5月1日)と、完璧に近い対応のように見えます。
よく考えるまでもなく、この非常時によほどのことがない限り、返済猶予(融資条件の変更)を断る地域金融機関はないでしょう。それが99.7%という応諾率になって現れています。
しかしながら、中小小規模事業者との接点の深い人たちの話を聞くと、まったく違う情景があり、その大きなギャップについて、昨日のブログに書きました。
中小企業金融の現場で起こっていることをフォローしている有識者の方々の話を聞けば聞くほど、「条件変更の申込数」には「コロナ感染者数」への違和感と同じものがあります。
医療サイドの違和感、すなわち日本のコロナ感染者数が少ないのは、PCR検査数の問題、その背景にある医療崩壊の懸念(裏には感染症法の呪縛がある)との報道が出てきて、素人にも理解できるようになってきました。
それでは金融サイドの違和感、すなわち「条件変更の申込数」の少なさには、医療崩壊の懸念や感染症法の呪縛のような理由はあるのでしょうか。
いまや金融検査マニュアルの呪縛という言い訳はできませんし、引当額を増やしたくないという金融機関の自己都合以上のものがワタシには見つかりません。
毎度同じことを言いますが、医療の最前線 (ドクターたち) が自らも罹患する恐怖の中、不眠不休で身体を張って戦っている一方で、「地域顧客のお金のホームドクター」たる地域金融機関は身を削る覚悟を持って、生死の境界線にある地元事業者に向かい合っているのでしょうか?
地域金融に関わるものとして慚愧に堪えません。
コメント
①地域金融における多くの中小企業の多くは、自ら資金繰りができない。→②そんなところに融資したら回収も苦労するだろう。→③えげつない取り立てみたいなことをやるのもどうかと思うので、個人ローンのように最終期日までの定期的な元本回収を中小企業でも行うべきじゃないか。→④「その通り」と20年くらい前に金融検査マニュアルも背中を押した。
これが約定弁済こそ中小企業金融の美徳となった経緯と考えます。
そしてかつて背中を押した金融検査マニュアルが消え失せても、家賃や人件費のような有事の支払負担に苦慮する固定費となんら変わらない定期的な元本弁済は、猶予がまかり成らない聖域となっているのではないでしょうか。聖域故に生死の境界線にある地元事業者であっても侵すことはまかりならんはずです。
都銀の短コロ取引ではみたことのない「打ち返し(折り返し)融資」なる、残高維持という地域金融機関都合のための面倒くさい融資までやって、美徳を守り続けていますので。