🚩報告書(案)の感想

まずは、

昨日発表された金融審議会「銀行制度等ワーキンググループ」の報告書(案)に関する日経新聞の本日付記事「苦境の地銀、多角化促す 金融審 銀行規制を緩和へ」の一部をお読みください。

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すべての地銀が規制緩和を生かせるかは未知数だ。メガバンクグループのようにシステム開発部門を自前で持っていたり、広域展開したりしている大手地銀はシステム販売や人材派遣で稼ぐ余地が広がり、歓迎の声が出ている。それに比べ、規模が小さい地銀はそれだけの経営資源を持っていないところが多い。=中略= 金融庁幹部は「再編などで経営基盤を強化しないと次に進めない地銀もある」と話す。地銀改革に向けたメニューはおおむね出そろった。規制改革を活用して収益改善への道筋をつけられなければ、いよいよ地銀の再編が本格化する可能性がある。(同記事より)


規制緩和に対応できる大手地銀とそうではない小規模地銀で格差が出てくる、だから再編という論法です。

これはこれで一つの考え方だと思うのですが、ワタシの意見は違います。

銀行子会社に認められる高度化等業務の中にあるシステムやアプリの開発のような業務では格差が出るとのことですが、たとえば当該銀行子会社が地元の開発専門業者との連携で代替できることです。(銀行子会社の外部連携の可否は書かれていないのでわかりませんがノーである理由はないのでは)銀行子会社よりも外部専門業者の方がスキルが高いというのは、往々にしてあることです。

そもそも規制緩和項目をすべてフルラインで自前で取り込む必要はないと考えます。

銀行の規制緩和は今までその業務を行なっていた他業態と競争することです。銀行子会社の商品サービスが既存業者よりも競争力があれば良いのですが、そうでなければ顧客からの支持を得ることはできず、いつまでたっても収益を見込めるものとはならないでしょう。

それでも多大なコストと時間をかけて合併した上で、規制緩和項目をフルラインでやりたいという銀行は果たしてあるのでしょうか。

さて、

ワタシがこの報告書で注目したのは、日経新聞が注目しなかった事業再生にかかわる出資のところです。

こちらはコロナ禍のもとで“待ったなし”です。

規制緩和の議論以前にコロナ禍の対応に全力投球すべきであり、この点をメインに報道しないところにメディアの力量不足を感じざるを得ません。

ポイントはここです。報告書(案)の12ページです。非常に重要な視点ですね。

現在、銀行・銀行グループが出資可能な事業再生会社については、非上場であることに加え、民事再生法の再生計画認可決定等が要件とされており、この結果、財務状況が相当程度悪化した会社が主な対象となっている。これについて、銀行・銀行グループによる早い段階からの経営改善・事業再生支援を可能とするため、事業再生会社に係る要件を緩和することが考えられる。

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コメント

  1. 八代恭一郎 より:

    地域での仕事のパイが増えない状況で、自らの財務改善のために銀行業務以外に進出できる規制緩和であれば地域に以前から存在してきた進出される側事業者の仕事どころか雇用まで奪うことになりませんかね。
    旅芸人さまご指摘のとおり進出される地域の事業者のサプライチェーンに連携のような形で入り込むようなことが地域経済を守るためには関の山じゃないですか?非効率ながらワークシェアリングで地域経済が成り立っていることを有識者先生かたはご存知ないのかしら。
    規制緩和の大義が小さな地域金融機関の仕事と雇用を奪うことは仕方ないとしても、地域の事業者の仕事と雇用を奪うことになればその地域を地盤とする政治家は票を失うことになりませんかね。

  2. 高見守久 より:

    私も多胡先生と同様、報告書(案)の12ページに強い関心を持ちました。信用金庫や信用協同組合などの協同組織金融機関は、早い段階からの経営改善・事業再生支援を可能とするため、要件を緩和された事業再生会社を設立し、地方活性化や地方創生に貢献したほうが存在価値を認められるのではないでしょうか。