まずは本日の日経朝刊、藤井一明経済部長のDeep Insight「金融業 溶かす覚悟を」から、
~地盤や顧客との絆を重視するリレーションシップバンキングは、2002年秋から03年にかけて大手銀に経営改革を迫った竹中平蔵元金融担当相が多用した言葉で、「主要行とは異なる特性」を持つ地域金融機関の責務を例示した。創業や新事業の支援、事業再生、担保や保証に頼りすぎない金融の仕組みなど、当時挙げられていた宿題は今も積み残されている。生き残りを懸けた再編の大波にのまれた大手行だけでなく政府にも、変わろうとしない地域金融の担い手に不満がくすぶっていた。菅首相の号令はそこに着火した。~(本文より)
本稿にある通り、2003年のリレバンの報告書、アクションプログラム等で提示された宿題の多くは、大部分の地域金融機関で17年半を経過した今も放置されています。
この5年あまり、森長官、遠藤長官のもとで進められた地域金融改革は、リレバン審議会で問題提起した宿題の延長線上にあります。
金融庁は監督、検査、さらには探究型対話という手法を駆使して、この宿題をやらせようとしたものの、やったフリで本格的に取り組まなかったレイジーな生徒たちがマジョリティだったことは否定できません。
喝が必要です。
ただレイジーな生徒への喝(菅首相の号砲)が「再編」というのは筋違いだと思います。
再編(すなわち合併・経営統合)を行っても地域の顧客のためにならないからです。この数年の地銀再編を見るに顧客本位のものはありません。その理由についてはこちらの論考をご覧ください。
https://www.47news.jp/47reporters/5617985.html
行政からのプレシャーは面従腹背でやり過ごす、株式市場からの評価(PBRが極端に低い)もどこ吹く風、地元顧客は借り手としての弱い立場にあり面と向かって文句を言うことはない、こういう状態の上に胡座をかいているレイジーバンクにどうやって宿題をやらせるか。
情けないことに多くの経営陣は変わろうとしない中、その鍵は地域金融機関の従業員にあるものと思います。
従業員の早期退職の急増、採用での苦戦など、地域金融機関のヒューマンアセットの崩壊は加速しています。
地域金融機関を去る、(就職先として)敬遠する人たちがいる一方で、上の意向に関わりなく立ち上がる人たちも出始めています。
レイジーバンクには心理的安全性がないため、内部での動きはまだまだ大きなうねりとはなっていませんが、そういう人たちの外部連携は着実に広がっています。コロナ禍はそれを加速するでしょう。
幕末と同じ構図です。ペリーの黒船はAIフィンテック、吉田松陰の留魂録は橋本卓典さんの一連の著作、などと思っています。
月刊誌Fで書かれた「得体の知れない組織」、地域金融変革運動体は地域金融機関の志士たちのネットワークのプラットホームになれば嬉しいですね。