本日の日経朝刊「将来の融資先 失う恐れ」は前日に続いて「廃業のリアル」の後編です。
この記事から印象に残った箇所を抜粋してみます。
〜日銀によると全国の銀行と信用金庫の貸出平均残高は2月に約578兆円と過去最高を更新した。前年同月比の伸び率は9カ月連続で6%を超える高水準だ。
〜金融機関は企業倒産の鈍化により、貸し倒れに備える費用を当面抑えられる。だが、休廃業にこそリスクは潜む。債務が大きく膨らむ倒産と異なり、融資が焦げ付く可能性は低いものの、中長期的には融資先の減少につながる恐れがあるためだ。ある金融庁幹部は「廃業で経営基盤が傷む恐れがある」と警戒する。
〜都内に中小零細の融資先を抱える第一勧業信用組合は、返済猶予や金利負担の減免、事業承継といった対応を進めている。借り入れがある飲食店はおよそ700社。野村勉理事長は「将来の融資先が消える危機感を強く持っている」と話す。(→注: ゼロゼロをばら撒くだけの金融機関と違って、さすが第一勧業信組さんはむやみやたら顧客の債務を増やすようなことをやっていませんね)
〜日本金融人材育成協会の森俊彦会長は「コロナ禍で債務過多になった企業の返済能力を高めるためには金融機関が融資先の事業をよく理解しなければならない」と指摘する。過剰債務を避ける廃業を勧めるにも、金融機関と企業の信頼関係が要になる。(→注: ゼロゼロをばら撒くだけで顧客の債務過多に鈍感な金融機関に聞かせたい)
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不思議なことに、いままで廃業に関するまとまった記事は見たがありませんでしたが、この「廃業のリアル(上)(下)」で現状をある程度理解することができました。
このブログで何度も書いていますが、廃業は大きなリスク・ファクターであるにもかかわらず、なぜか地域金融機関のリスク管理項目の中には入っていません。
廃業による顧客基盤の喪失・収益機会の崩壊に関わるストレステストを行うことが然るべきと思うのですが。
とくに廃業の加速が懸念される小規模事業者の取引先比率が高い協同組織金融機関は。
コメント
廃業リスクに関するストレステスト、というのは色々な要因が考えられるので、定性化していくのが難しいように思えます。経営者の年齢などである程度括り出すことはできそうな気はしますが、常に日頃から顧客の事業を把握していなければ、経営者のメンタル低下等の予兆を把握することも難しそうです。少なくとも財務諸表の与信審査だけで良しとしている金融機関は対応できそうにありませんね。
一定程度の資金量がある金融機関はその収益の中で吸収できると踏んでいるのかもしれません。が、コロナ禍のように社会全体のテールリスクが顕在化している状況で、平時のレアケースが大量発生してそれが一定規模以上になり、バランスシートに穴が開く、という事態も、確かにあり得ないことでは無いように思えます。
ランスロさま、
貴重なコメント、ありがとうございます。
私も顧客との日頃の対話に裏付けられたミクロデータの積み上げだと思っています。