異次元緩和以降、リスク・プレミアムは崩壊し、僅かなリターン追及のために膨大なリスクに晒されるという資金運用者受難の時代が続いています。
恒常的に預貸率が低い地域金融機関は有価証券運用に多くを依存せざるを得ず、息も絶え絶えの状況が続いています。いまや低金利局面が長く続いたことで、金融上昇局面や金利の乱高下を経験した人たちも残っていません。
苦境に陥る地域金融機関、その始まりが有価証券運用での躓きであることは否定できません。
地元の金融仲介業務で顧客評価と収益性の両立に手応えを感じてきた地域金融機関が、有価証券運用に足下をすくわれる事態に何度も愕然としてきました。
僅かなリターンのために過大なリスクテイクが必須という、異次元緩和で歪んだ市場運用のリスク/リターンの座標軸から、別の座標軸へと行くしかありません。
それはなにか。
地域金融機関にとって、リスクをしっかりと把握することができて、リスクをある程度コントロールできるところ、すなわち地元における信用リスクです。
遺憾ながら、多くの地域金融機関は地元において信用リスクをとりきれているとは思えないし、コロナ禍でますますその傾向が強くなったと思います。
ゼロゼロ融資等の全額保証のコロナ対応制度融資は多くの中小小規模事業者を救ったものの、多くの地域金融機関の現場力低下を加速しました。これは金融機関の姿勢の問題であり、ゼロゼロ融資が悪いのではないことは言うまでもありませんが。
ミドルリスク層への取り組み強化といいながら、ノーリスクのゼロゼロに融資に殺到、経営改善・事業変革・事業再生の支援(つまり、顧客本位という志を持って、頭を使って、汗をかく)はおろそかという図式がコロナ禍においても変わったとは思えません。
「金融仲介は儲からないから、コンサルティングや規制緩和を受けた業務の多様化へ」
地域金融機関の経営層からよく聞く話です。
業務多角化への挑戦を否定するつもりはありませんが、
そもそも、
「(顧客本位という)志の欠如した、頭を使わず、汗をかかない、リスクを取らない」、そんな金融仲介業務が儲かるはずはありません。
それで有価証券運用に過度な期待をかける。
スタグフレーションという言葉が登場した時に社会人になり、70年代末期から80年代当初の金利乱高下の中で、市場回りの仕事に就いていた老兵には無謀としか思えません。
昔のことを言うと嫌われるよ、との批判の声を聞きつつ、、、
コメント
私は勿論スタグフレーションが進んだ時代は教科書や歴史でしか知りませんが、いざ理論のみならず歴史的な事象が現出してきそうな状況に驚嘆しています。
これから日銀も異次元緩和の出口を志向せざるを得ないと思います。再び金利が影響力を発揮してくる状況になる訳で、今迄の漫然と資金を流していた時代とは状況が異なってくると思います。しかも、グローバル化で国際分業が進んだ現代では、何処から商品高騰、インフレのリスクが現出してくるか分かりません。
様々なリスクを目配りしながら、事業動向を見守り続け、状況によっては大胆な改善策を求める、という長期短期の重層的な判断が求められる訳で、その為の体制や人材の育成が急務だと思います。
恐らくバブル以降、金融界にいた人々の多くは、そういうナローパスを潜り抜けて行けるという実感がないのではないでしょうか。だから誰でも行ける大きな「広い道」を誰かが開いてくれることを望んで、その結果が異次元緩和、だったように思えます。
「最早逃げ道は無い、狭き門より入れ」という状況になっていると思います。